猫ちゃん仕事を片付けスマホで予定を確認しながら今後の事をまとめていれば横から何かがのしかかってくる。何かと言ったところで人様の家でこんなことをしてくる奴は生憎一人しかいないわけで。なァにしてンだよ、と軽く小突いてやれば別にィと返しながらも擦り寄ってくるのをやめない。
じっとこちらの手のひらを見つめてくるのを無視していれば、だんだんと非難の色を帯びてくる。耐えきれなくなったのか、勝手に掴んで自分の頬まで持っていくものだから仕方なしに指の背で撫でてやれば気持ち良さそうに目を細める。
普段は勝手に一人で遊んでいるものの、たまにそういった気分になるらしい。逆も然りでどうやら触られるのが嫌な日もあるらしいが。以前に気まぐれに近くにある頭を撫でてやればお気に召したのか、こういった振る舞いを強請ってくるようになった。頭を撫でてやったり、頬を撫でてやったり、耳元をくすぐってやったり。今時の高校生でもまだマシな触り合いをするだろうに、ただのじゃれ合いでしかないそれに彰人は満足気な顔をする。
毛先を染めているわりには柔らかい髪を指で梳いて、自分が与えたピアスの付いた耳元をなぞる。気に入らなければそっぽを向き、自分の触れてほしいところへ擦り寄るその姿に何の相手をしているかが分からなくなる。
「………猫なんざ、飼った覚えはねェンだがな」
「……んぅ、猫?オニーチャン世話できなさそ」
ケラケラと楽しそうに笑う彰人の額を指で弾く。今現在進行形で面倒見てやってンだろと口に出さなかっただけマシだと思ってほしい。