アサノハ 刀をひたすら愛でるひと。加州清光は別格の永久近侍。字書きゆえ、文字だけをちまちま上げます。 ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji POIPOI 3
アサノハTRAININGいつもの、だらだらもだもだしたくりかしゅになる未来が見えたので剪定【くりかしゅ】まだ知らない 夕暮れの庭は輪郭が柔く曖昧に映る。背に西日を受けた己の長い影を見やりながら、大倶利伽羅はゆるりと歩いていた。 馬小屋から続く小道を抜け、夕飯の匂いが本殿から微かに届き始めた頃、 「あ、いたいた!」 前方で軽やかな声が響いた。何事か、と大倶利伽羅が目を上げれば、影の向こうに加州清光の姿が見えた。こちらへ手を振りつつ駆け寄ってくる。 浮かべているのは、さながら向日葵のような、弾けんばかりの笑顔だ。 思わず大倶利伽羅は立ち止まって背後を顧みたが、当然のごとく誰の姿もない。……となると。 ──この満面の笑みは、俺に向けられているのか。 推察するものの、思い当たる節のない大倶利伽羅は首を捻った。 顕現して半年も経てば、知識や記憶は嫌でも積み重ねられているものだ。大倶利伽羅にとって加州清光という存在は、そのうちのひとつに過ぎなかった。すなわち刀の時代が終わる頃、天才と名高い剣士に使われたとされる実戦刀──と。 1950 アサノハTRAINING【くりかしゅ】名前を呼んで「伽羅」背後から呼ぶ声が聞こえる。甘えを秘めた響きだ。面倒なことになりそうだと素知らぬふりでいると、焦れたように足音が近づいてきた。「伽羅、ってば」「なんだ、加州」肩を揺さぶられ、仕方なく振り返れば、拗ねた赤い瞳がすぐ間近。それだけで何を求めているのか、嫌でもわかってしまう。甚だ不本意だと、負け惜しみの代わりにため息をひとつ零した。「……清光」「よくできました」すぐ三日月型に細められた目が、赤をほとんど隠してしまう。その満足げな表情を見て、まあいいか……と思ってしまう程度には、どうやらほだされているようだ。 267 アサノハTRAINING140文字SSのお題貴方は主清で『はじめまして、を繰り返す』をお題にして140文字SSを書いてください。「あー。川の下の子です」そんな挨拶をしながら、これは何度目なのだろうかと思った。はじめましてだけど、はじめましてじゃない。そうでなければ、目の前で優しく笑う人を……こんなにも懐かしく、愛おしく感じるはずがない。始まりはいつも薄紅色。──願わくは愛を。あなたには安寧を。 140 1