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    poyoyo_piyoyo

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    まこひろ まこくんがゆ〜くんを好きな世界線でゆ〜くんはケンジの彼氏を2人殺している世界線

    #ゆ〜けん

    共感クーデター「ケンジと付き合ったら?」
    「ええ?なんでよ」
    「じゃあ俺と付き合おうよ」
    「もっとなんでよ!w」

    窓の外を見る鳴子裕太は、あははっと笑った。顔が見れない、でもそうやって笑う裕太のことが嫌いじゃない。戦力外通告も、出来たての彼氏と帰路に着く中原賢二も、窓の外から目をギラギラさせてそれを見ている裕太も、全くもって絶望に程遠い。
    それでもやっぱり気だるくて、教室の隅には埃が溜まってるのを、掃除をするのもだるいからな、とひとり共感した。

    「じゃーもう帰ろう」
    「んー⋯あれ、ヒロくんは?」
    「え、先帰ったんじゃないの?」

    裕太は窓の外からやっと視線を移し、教室を見渡した。俺がカバンを持って、裕太にも渡してやったら、まあそんなもんかと振り返らず教室を出た。もう窓の外に賢二はいない。ボーナスタイムのようなものだ。いや、ボーナスタイムだ。
    ウサギ小屋を冷やかしてコンビニに寄って、ずっと前からの友だちみたいに最小公倍数のバス停で別れた。本当の幼なじみなら家の隣なので、このバスにも一緒に乗り込むけど。これから先裕太の一人の時間がずっとこの長さなのもいい、この長さならいい。
    バスの背中を見送らず歩いて、少し離れたところで振り返り発車前のバスの中で合う目を探すけど、そんな可愛いことは起こらない。振り向くのは首が疲れるもんな、とひとり共感した。

    家までは短く、それでも長く、賢二の恋愛が悲しい結果に終わりませんようにと自分のためにお祈りした。


    ◆◆◆


    「振られたァ!!!!!」

    驚愕の一声で朝の時間が瞬いた。有り得ない。この数日、裕太は毎日俺と帰っていたのに。賢二が別れるなんて有り得ない。
    一緒に登校していた裕太は「今回早くない?」と嬉しそうに笑っていた。早い、速すぎる。赤くてツノあって3倍。
    あまりの驚きに硬直する俺の後ろから、登校してきた仁科尋斗が「良かったな」と声をかけた。

    「ついにジンクスを打ち破ったな、ユウタと付き合えよ」
    「はっ?!」
    「王様?すげぇ」
    「どゆこと!?」

    丁度チャイムが鳴り、尋斗はほら前向いた向いた、と手を払った。有り得ない。

    お前この数日何してた?


    ◆◆◆◆


    「初めて振られた⋯悔しいよ俺⋯ッ!」
    「ケンジ〜咽び泣くなよ〜」

    放課後、賢二が未だに唸っている。裕太はひたすら機嫌良さそうに、慰めがてら「今日どこ寄って帰る?」と笑っている。賢二ははいはい、と少し苦みばしった顔で裕太を押しのけた。嫌いじゃない光景で、賢二のことも好きで、裕太のことはすごく嫌いじゃないのに、ちょっとだけ胃液があがってきて口の中が酸っぱかった。

    「付き合っちゃえば。ゆーけんで」
    「CP名じゃん」

    目を逸らして言えば、賢二はだるそうに答えた。裕太はそういうのを知らないので、あからさまにハテナを浮かべた。
    でももう無理なのだ。

    「付き合っちゃえば、ゆ〜けんで」
    「何bot?」
    「う゛〜〜付き合っちゃえってば〜〜〜」
    「ヒロくんもマコくんもどうしたの?本当に」
    「ユウタ、考えてみろよ」

    尋斗が手を上げて、裕太と目を合わせた。考えてもみろよ。
    だって付き合ったらずっと一緒に帰れて、相手の一人の時間を奪えて、相手が大切だって気持ちに名前がついて、俺は本当のところそれを望んでなかったかもしれない。だって裕太は。

    「賢二と付き合ったら別れない限りずっと一緒に帰れるぞ!いっつも彼氏出来る度寂しがってただろ!」
    「え〜〜〜!や、そりゃそうだけど⋯⋯え?それアリなの?」
    「俺は付き合い賛成派!」
    「多数決かよ!そんなんでゆ〜たの健全な生活の邪魔すんな!反対派です」
    「え〜え〜え〜」

    裕太が頭を抱えている。賢二は俺を見た。賢二は多分少し気付いてる。俺が裕太を嫌いじゃないこと。だから身を引いてる訳じゃない、そんな程度の理由なら踏み倒せるくらいには賢二は裕太が好きだ。ただ俺も賢二もダルいのだ。臆病で恐ろしくてビビりでダルい。俺たちは似てるところがあって、だから相手の目線の先が分かる。
    でも、政治ってそうじゃない。

    「俺はゆ〜けん派閥の内閣総理大臣です」
    「オラァッ!2対1だァッッ!!」
    「はあああああ!?!?」
    「ごめんなさい⋯アタシ今からファミチキ2個食べるの⋯ッ」
    「ズルだーーーーッッ!!!」

    賢二はバウバウ吠えてたけど、裕太は事態をやっと飲み込んで、「まあ2人が言うなら⋯」と困惑しながら喜んでいた。


    ◆◆◆◆


    「ファミチキって反対方向じゃん」
    「すまんな、だから今日は2人で帰れよ。だからと言って味占めんなよ」
    「俺は渋々だぞ!」
    「いえ〜い帰ってイカしよ!!」
    「お前はもっと気持ちをしっかり持てよ!アイツらに上手いこと載せられていいのか!」

    また明日ね!と振り返って笑う裕太の一人の時間は、加速的に無くなっていくんだろうな、と思った。
    隣の尋斗が賢二の背中を見てるのを、見てられなくて先に歩き出した。


    ◆◆◆◆


    「ジンクスだ」
    「ジンクスが無かったら⋯俺は2人が付き合ったらいいのにって思った」
    「ジンクスって言うのは⋯アレだ。ケンジが付き合った奴は死ぬやつ。分かりやすい」
    「俺はユウタの友だちだから、ユウタに死んで欲しくないし、ケンジの友だちだから、そんな悲しいことにならないで欲しい」
    「ケンジが3人目と付き合って、俺が委員会で遅くなった時、お前がユウタとケンジが付き合えばって言ってるのを聞いた」
    「確かに⋯って」

    「そんなことないでしょ」

    移動教室は音楽室。次の時間は昼休憩。飲み物を買って教室に戻るから、と俺は尋斗を引き連れて体育館側の自販機に向かった。教室は3階だから、歩く時間は長かった。2人から遠ざかるのには充分だ。
    尋斗はジュースを買って、腰を落ち着けた。休憩が減ると思いながら、朝からむかっ腹を立たせていた俺は尋斗に付き合った。

    「そんなことある」
    「ケンジは⋯ユウタのことが好き⋯だと思う」
    「わからん、違うかもしれん。好きだったら他の奴と付き合わないよな、とも思うけど⋯」

    眉間を寄せ真剣に考え込んでいる尋斗に、どんな喜劇かと突っ込みたくなる。登場人物はみんな気付いてるよ!ああ嘘か、裕太も気付いてない。そうだ、この物語にコイツの席はなかったのに。

    「でも、多分好きなんだ」
    「そんで付き合わないのはさ⋯ジンクスのせいだ」
    「だって、好きな奴がそんなことで死んだら悲しいから⋯」
    「お前らがふざけた会話してるの聞いて、やっと思い付いたんだ」
    「そんで、⋯⋯⋯」

    そこで尋斗は言葉を区切って、ぐうぅと顔をクシャクシャにさせた。賢二と付き合っていた男の足でも折ったのだろうか。真面目だけど、案外やりかねない。
    でも尋斗は俺の想定外にしかいない。モブの癖に!

    「俺⋯⋯ケンジが、好きで⋯⋯だから、思い付かないようにしてたんだ⋯と思う⋯⋯⋯」
    「ケンジが好きで⋯⋯⋯」
    「ずっとこのまま4人で入れたらって⋯⋯⋯⋯」
    「でも、違うんだ⋯⋯⋯」

    場面は1つで良かったんだ!俺が自分のために祈りを捧げてるシーンで終われた!動かない話に動かない関係にちょっとした感傷でいつかの俺は全部忘れたかもしれないのに!


    「好きな人を幸せにするって、辛いな⋯⋯⋯⋯」


    意外性なんていらない!ショートショートでいい!掌編にすかすかの中身で俺が納得するんだ、共感するんだ!誰もが語ったことのあるような内容で感傷に浸るなんてお前はハヤカワ文庫か!?マーガレットか!?ジャンプの読み切り新人賞か!?何が幸せが辛いだコピペか棒が1本減っただけで意味合いが変わる人生は不思議だからこそ面白いか!?面白くもなんともねぇよ!イライラが喉から突き破ってでて、嫌いだ!ぶん殴って引き摺り倒して。なんだよ!ダルいからって怖いからって動かなかった俺が情けなくて、なんなんだよ!好きのために動けるやつが偉いか!?そんなことないだろ!そんなことないけど、
    でも、
    あー、
    負けた、と、思った。

    「はー⋯コピペかよ」
    「え⋯⋯?殴っておいてそれ⋯⋯⋯?」

    そんなにつまんなかった⋯?結構真面目に話してなかった⋯?と尋斗は殴られたところは押さえず、尻もちを着かせたためズボンだけ払った。尋斗の目に浮かんでいた涙は引っ込んでいた。

    「じゃあ2人を付き合わせよ」
    「え?」
    「なし崩しでも、持ち込んだら多分いけるよ。詭弁でも寸借詐欺でもなんでもやろう」
    「犯罪はしないけど⋯⋯でも、」
    いいのか?

    ムッとした。どうせ俺が誰が好きかなんか知らないやつが。状況に適した同情を投げかけられているようで、心底ムッとしたけど、もういいのだ。

    「もちろん、なんか奢ってよ。メロンパンとか、ファミチキとか」
    「あ⋯おう!」

    もう負けた。負けたから、もうどうでもいい。それよりも、裕太と賢二が付き合った場合残された俺たちは2人で帰ることになるのだろうか、とそんなことを考えていた。
    自販機の隣のゴミ箱に飲みきった缶ジュースを入れようとしたが、ゴミ箱の入口パンパンだった。尋斗はゴミ箱の蓋を取って、袋の中身をならしてから俺の分と自分の分を入れてまた蓋をした。まあ⋯俺だってそうする、とひとり共感したことにした。
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