「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
玄関前でモクマはチェズレイへと向き直る。エプロン姿のチェズレイとチークキスを交わし、向かい合って微笑む。まるで新婚生活みたいでモクマの胸は高鳴った。
「あァ、こちら、お忘れなく」
チェズレイがモクマへ手提げ袋を渡してきた。
「ん?」
保冷機能を持った小さなバッグは軽い。目で「なにこれ?」と問う。チェズレイは「お弁当です。早起きして作りました」とはにかんだ。かわいい。
「気が利くねえ。嬉しいよ」
ますます新婚さんっぽい。ポニーテールといい、チェズレイもまた新婚カップルを意識しているのかもしれない。今回のセーフハウスは一軒家タイプで、結婚を機にマイホームを持ったとするカモフラージュにはぴったりだ。あくまでモクマの妄想だが。
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