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    raisegoodnan

    @raisegoodnan

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    raisegoodnan

    DONE2089の本編前、硝子から見た二人それぞれの話。
    !Caution
    本作は、本誌【2089】の Part1とPart2間、
    または本編読了後のお読みを推奨しています。
    208801(Nov.2086)

     サイレン、サイレン、サイレン。
     くるくる回る散光式蛍光灯、通称パトライトと、昼も夜も関係なく上げ続けられる悲鳴のようなサイレンが私の開戦の合図。私たちは白衣を着た兵士。皆同じ方向へ顔を向け、名前しか知らない誰かのために崇高な使命を持った私たちは心を削る。
     家入先生! 家入先生! はいはい待ってなよ、今行くから。
     医療が進んだとはいえ、人は死ぬ。突然脳の血管は詰まるし心臓は止まる。半世紀前より格段に心筋梗塞や脳卒中の存命率は上がった。そりゃそうだ。半世紀前と比較して、医療が何も進まないはずがないんだからさ。医療機器も薬も進化し続けてる。自動運転の精度だってかなり高まったし、交通事故の死亡率も劇的に低下をした。電車に飛び込んでみたくなったり、手首を切ってみたくなったり、そういった衝動に勝つすべは見つかってないけれど、日本がヤバヤバの頃、今から七十年前と比較すると天地の差。豊かになった我が国で、死ぬ理由を見つけるほうが難しいだろうね。あ、おまけに言うと、二〇二〇年代に世界中で大流行した未知のウイルスについて、日本は打撃を受けなかった。というよりも、あんな状態の日本を訪れる外国人はいないし、帰国する日本人もいない、ウイルスが入ってくる経路がなかったわけ。世界のパニックと日本のパニックは別々のものだったけど、それ以上の経済損失を被ったにも関わらず、よくここまで持ち直したもんだって思うよ。
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