愚人美味礼讃本能の恐怖が今はないのに前世の刷り込みで時折ふと近づくとビクリとするジョセフはまるで被食者のカーストに諦めのついた鼠のようなザマ、..."昔"の彼なら嫌がらせれば頭を振りかぶって前歯をぶつけ皮膚を引きちぎろうとするように口達者に噛みついただろう。ただ目の奥に体の軸には怯えが見え、しかし足を踏ん張るだけに留まる。揶揄うと膨れっ面になる、しかしそれは抵抗じゃない、他の存在を知り受け入れ甘んじてくれたのだ、甘んじられたのだ、そんな生温い愛を追い詰め...追い詰められても、歯向かう理由など"今"はないのだと、
「なンだよ、カーズかよ」共存。これが望んだ世界ではないのだからそれは当たり前でしかないことを、種族間の対立は二度と成立しないのだから未来永劫もう繰り返すことができないのを、手のひらに突き刺さる爪先に辿る血こそ、運命(さだめ)と、カーズは彼の家でにこにこ笑いかける祖父を見知っているのだ。
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