翻る花びらのように「――朝日奈!」
突然、鋭く響く低い声に名前を呼ばれて、びくりとして思わず後ろを振り返る。聞き慣れていたはずのその声が敬称もつけずに呼び捨てたことにも、それまで聞いたこともないほどに焦りと熱を宿していることにも驚いたし、息を切らせながら早足につかつかと近づいてくる彼のしかめた顔に汗が滲んでいることに気づいて、赤くなった目を見開いてしまう。
どうして、と疑問を口にする前に手首を掴まれ、気がつけば私は篠森先生の腕の中にいた。
持っていた卒業証書の入った筒は、引き寄せられ抱き締められた衝撃で指を離れて、ことんと軽い音を鳴らして床に落ちる。それが転がっていく先を確かめることも出来ず、私は温かな熱に心臓を跳ねさせた。
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