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    芝井🥐

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    芝井🥐

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    学パロテジュオク
    青春感ましましのオクタビオが過去の事故がトラウマで前に進めない中でテジュンに偶然的な出会いをする話。完成時はしぶにて公開予定。

    俺とアンタの逃避行『あんたならやっていけるから、自信持って新しい学校に行きな。寂しくなったら、また戻ってくればいい。アタシは待ってるよ。』

    『あと、アタシはあの事を気にしてないから。』

    『今ではすっかり元気だし、学校にだって通ってる。シルバが思う程、ヤワじゃない。』

    『だから、顔ぐらいは見せなよ…。』

    22時を回った長針がが街灯の光に反射してながらカチカチと音をたてる。メトロノームのように速さを変えることも無く、一定のスピードで動いている。レースカーテンから漏れる眩い光とスマホのブルーライトがに照らされながら、誰かが綺麗に整えたシーツの上で仰向けになる。目が痛くなる容赦ない光と一方的に届く親友からのメッセージ。画面には相手からのメッセージカラーである白色の吹き出しだけが羅列している。彼女のメッセージを無視したい訳じゃない。けど、どうしてもメッセージ打つ手が止まってしまう。少し打ったとしても指はバツボタンを長押しするのが定例となっていた。…最後に送ったのはいつだっけな。思っいきり上にスクロールしてみる。1回、2回、3回、4回、5回…といくら指を上下させても白色は続いていた。

    『今日は、海行ってきたよ!』

    『プライベートビーチじゃなくて、沢山の人が海水浴をする賑わってる所ねっ!』

    『昼はすっごく、人も居て楽しいんだけど夕方になると人が急にいなくなるのよね』

    『静かで寂しい気持ちになるけど昼とは違った良さがあって私、気に入っちゃった!』

    『次はシルバと行きたいなぁ…なーんて笑』

    数え切れないぐらいのメッセージが上へ流されて行く。シェが引き篭る俺に定期的に送られてくる外の様子と本人の思い出。赤裸々な日記を覗いているようでクスッとしてしまうのは、どこか彼女のことをまだ忘れられない証拠だろうか。特にこの海の話なんて、少し長くて終日そこで過ごしてらしいメッセージは凄く楽しそうで。海か…行ってみたいな。そんな陳腐なことを並べながらお目当ての吹き出しが目にはいる。

    あった。
    遂に見つけた俺のカラーメッセージ。髪と同じ色の蛍光味が強い翡翠色で一言。

    『明日、また学校でな!』

    ちょうど1ヶ月と1日前の21時59分に送った俺が親友に向けた最後の履歴。このメッセージを打たなければ、俺は今日という日を迎える事無く親友の隣で笑えただろうか。視線に被った街灯の黄色に照らされるビニールに包まれた真新しい制服が鈍く光り、笑える日なんて来ないと告げる。俺の罪は罪のままだと。

    あの日。あの日はいつもと変わらない日常が流れていた。無慈悲に鳴るチャイムで始まる号令に軽くお辞儀をして授業開始。ここまでは良かった。チームで実験開始時に鼻につく奴がいたのが悪かったと言えば悪かった。そいつはいつも妙に絡んでくる輩が化学の実験中にああしろこうしろと指図だけして自分では何も触らなかった。製薬会社の御曹司なら、この位楽勝だろ?と王様気取り。それにムカついた、それだけだった。カッとなって相手の胸倉を掴んで近場の机に投げ飛ばした。グヘッと不快な音を出して倒れた自称王様に仕返しが出来て口角が上がったがその口端はすぐに垂れた。関係のないシェが膝をついて左手で右手を必死に押さえ込んでいた。シェの掌は赤黒くなり手首にも筒状の鉄が擦れたような細いラインがくっきり。歯を食いしばって、痛みに耐えてる姿は彼女らしく全身に緊張が走る。シェが苦しんでいる理由は王様でもなく周りの生徒でもなく傾いた机に置かれた不自然に直立したガスバーナーが語ってくれた。王様がタックルしたその机にはガスバーナーが青い炎を灯されてらしく、流星の如く落ちる寸前で近くには生徒達のノートやアルコールが染みた脱脂綿やアルコールランプといった引火性がある物が散らばっていた。それに一刻も早く気付いたアネキは自分の身を厭わず素手でバーナーを掴み倒れないように約2秒の間支えてた。何気ない2秒、俺が寝返りを打つ2秒、そんな一瞬なものなのに彼女にとってはとても長い5秒。それから彼女は保健室ではなく救急車に吸い込まれた。事件としては彼女の不注意として処理されたが、校内では勇気ある生徒として注目の的になりそれに比例して俺は居場所を失った。周りの目が痛かったのもあるかもしれないが、それ以上にシェの隣りに立つ度に真っ白な包帯が嫌味を吐いてくる。

    ─お前のせいだ。

    ──親友を傷付けてまだ隣にいるつもりか?

    ───早く、いなくなれよ。

    やめてくれ、やめてくれよ…。
    俺が、俺が悪いのか…!?
    あいつが俺に命令なんて糞みたいな事をしなければこんな事起こらなかったんだぞ?
    俺は悪くない…俺は悪くないんだ!!

    目を閉じる度にあの日が俺を追い詰めて、気付いたら閉じられた世界の住人として自室に引き篭った。それに対して親父は次期CEOが不登校という事実がシルバ製薬の恥とでも言うように俺に転校を命じた。クソ親父の事は心底嫌いで本来なら突っぱねて無視する所だがシェの隣に立っている俺自身が許せなくて、傍にいるのが怖くて…あの日を忘れたかった。そのキッカケを掴むべく、俺は彼女から逃げる形で公立高校に入学が決めたのだ。

    「…ごめん、アネキ。」

    届けることもない謝罪が部屋の隅に落ちる。時計は絶え間なく今日も動く。俺が幾らあの日の事を思おうと戻る事は無く、履歴なんて現実には残りはしない。ただ、秒針と共に脳裏に刻まれるだけ。明日なんて嫌いだ。俺の笑う時間は止まったままなのに、無慈悲に右回りする羅針盤。それから逃げるよう俺は目をつぶった。新しい学校、新しい制服、新しいクラスメイトと出会う前日の17歳の後悔は長針の音と共に消えることを知らない。

    ***

    24歳という節目に愛車を手に入れた。いや、愛車というより友達を手に入れたと言っても過言でもない。幼い頃から、人付き合いが苦手な俺が誰かの為に金を捻出する所なんて殆どなく、社会人になったら尚更貯まっていく一方だった。気軽に話せる友達も社内でできるはずもなく、特にこれと言って楽しみもない。そんな俺をみて呆れた同居人が1冊の車のカタログ雑誌を差し出した。それが友達との運命の出会いだった。包み隠さず表現するなら、一目惚れだった。同居人には相変わらずの塩対応をしていたが俺の中で暴れ回る購入欲求に色々と難しい理由を付けてそれから程なくして人生の高額の買い物史上で殿堂入りした。車を購入してからというもの、凄く満たされる。毎日友達と遊ぶ感覚と似ていている。今日も、俺は友達に会っていた時だった。夜の時間だと言うのに甲高い声が狭い車庫に響いた。

    「明日、車貸してよっ!いいでしょ!?ねぇ〜!」

    「貸さない、お前の運転にはろくな記憶がないからな。」

    「それ、昔の話でしょ!?」

    「2年前を昔として表現するのは間違ってはないが、人間は簡単に成長しないだろう。」

    「むぅ!!ケチッ!!!」

    ケチで結構と同居人に吐き捨てると、もういいと髪の毛を振り上げて自室に帰っていった。車庫と自宅の繋ぐドアが鈍い音をたてる。相当なイラつきだな。同居人のミラは家族のような存在で恋人とは違う固い絆で結ばれた義理の兄弟。孤児院育ちの俺達は支え合って生活する癖が抜けなくて、互いに大切な人ができるまでは一緒にいるという暗黙のルールの元生活をしていた。友達というやつがなくても生きてこれた大切な人だ。改めて、自宅の車庫止められている車2台を見やる。チョコレート色の乗り回しされてきたオンボロ車と最近リリースされた一般市場では滅多に出回らない惑星アンジェリア産のジープ。オンボロ車はミラの愛車である。扱いが雑なのか性格からでる扱い方の問題なのかわからないが結構な傷もの。それに比べて俺のは最新AIによる安全機能もさることながら、ルビーにも似た艶やなカラーリング、収容スペースと乗車人数を自分なりにカスタマイズできる車内、乗り心地を追求したゲーム用チェアのようなメッシュ生地のシート…挙げればきりがないが、つまり俺好みの車なのだ。初めて紙面で出会った時の興奮が今でも抜けないぐらいには気に入ってる。ちなみにミラも気に入ってるらしく、私物のうさぎのぬいぐるみを勝手に置いたり先程のようなオネダリをしてくる。エンジニアの仕事を始めてからというものの基本給がそこら辺の社会人より高く裕福な暮らしというのを満喫していたからこそ、買えた一級物。そんな大切なものを杜撰な同居人に安々と乗らせる訳にはいかない。

    「本当にいい車だ。」

    今まで画面上の記号の羅列にしか関心のなかった俺にとって車というのはアウェイな産物だった。にもかかわらず、毎日飽きもせずにメンテナンスをしてはニヤつく日々は子供が玩具の車に遊ぶのと同じ感覚なのだろうか。子供の頃なんて、今の暮らしとは程遠く玩具なんて単語も知らなかった。童心に返るという表現とはちょっと違うが、幼子のようなウキウキとした気持ちで心が温まるようだ。
    少しばかり不満があるとすれば、これの気持ちを誰かと共有できないことぐらい。友達がいない弊害がここで出るとは思わなかった。

    …いい歳して友達いないとかぼっちの極みだな。

    夜という時間が俺を闇に誘い込み、皮肉気味な思考を助長する。駄目だ、そんな事考えたって何かが生まれるわけでもないと言い聞かせて時計を探す。

    「そろそろ寝るか。」

    車庫内にある錆びれが目立つ薄汚い金属棚に工具に混じって、一定のリズムを刻み続ける小さなアナログ時計が22時を指そうとしていた。学生だった頃に愛用していた目覚まし時計だったもの(上部にベルがついてるがその音は錆によって鈍くなってる)は、埃まみれで数字盤も新品のような輝きはなく骨董品となっていた。ミラはそろそろ捨てろと言ってくるのだが、もったいない病を発症してる俺は首を横に振り続けた結果、車庫の時間を刻む仕事を任される事となった。カチカチ音は耳をすませば聞こえる程度で、車のエンジン音が日夜響くこの場所ではないも同然だった。軽く背伸びをし、愛車に背を向ける。近くの簡易的な電灯を消せば、足音に隠れて聞こえる時を刻む音。昔の俺がよく聞いてた懐かしい音は静かに今を刻みながら俺の背中を押すのだ。

    ***

    キーンコーンカーンコーン

    「つまんねぇ。」

    登校初日から3日経ったが、俺の席を避けるようにグループを作り喋り込むクラスメイト達。今なら、白紙の隅をちぎられ置いてかれた角の紙切れの気持ちが分かりそうだ。クラスメイト達は俺を視界に入れながら楽しそうにお喋りだ。緑髪だ、金持ちだ、脚が無いだ、話題なんて考えたくはないがその辺の会話をしているのは嫌でもわかった。そんなに気になるなら、声掛けろよ。無愛想に返事だけはしてやる。シェがいたなら注意するであろう机に脚を乗っけって楽な体制になる。ガタンと言った机が気になったのかクラスメイト達が一瞬に黙ったが、すぐに小鳥達のさえずりのようにまた話を始めた。あっちでは、こんなだらしねぇ体制をしたら仲の善し悪しに関係なく元クラスメイトに注意されたが、こっちの生徒は特に反応はなかった。…先生なら俺に説教するのだろうか。親父が無理矢理連れてきた学校だから、スルーされそうな気もするがな。

    四角い枠に囲まれた空に目線を移す。3階から見える外の風景はビルや住宅、アパートなどが乱立し共存していた。街中にぽつんと土地を作って建てられたと言っても過言ではないような平凡な学校。新鮮といえば新鮮だが、金持ちの生活をしてるからと言って一般人の生活を知らない訳じゃない。次期CEOが世間との壁を作らないようにと教育されてきた身だが、俺という厚い壁はアイツらには越えられないらしい。結局、誰からも話かけられずにチャイムが次の授業へ合図を出す。

    「まだ、あっちの生活の方が楽しかったぜ。」

    金属の脚を下げぬまま、授業が始まる喧騒に耳を傾けながら呟いた。それから柔らかく先生によって俺の脚は机の上から退場することになる。流石に先生は先生らしい。俺の期待を少しばかり裏切ってくれたことが嬉しかった。この学校に来ての収穫なんてそのくらいだ。

    ***

    何度もチャイムは繰り返して、退屈な日がまた終わる。席の前に立ち、号令と共にお辞儀をすれば無事自由な時間が与えられる。高校生って奴は、どうにも落ち着きがない。同年齢から見ても滑稽の塊にしか瞳には映らない。俺は何回もそいつらを瞳の隅に置きながら、玄関口に足を進める。俺はローファーのコツコツ音に混じって金属音を鳴らす。中坊の頃に、アミューズメントパークのアトラクションで調子に乗ってスタントの真似をしたら両足がぐちゃぐちゃになって使い物にならなくなった。アネキは散々怒鳴り散らされたが、クソ親父から怒られることも無く、代わりに極限まで人間のフォルムに近付けた歩く事しか出来ない接待用の義足を病室に置いていった。放任主義のアイツが何も言わずに置いていった鉄クズを着けるはずもなく、学生の立場だなんだのテキトーに並べて足の形を模し軽い金属で出来た競技用の走りに特化した機械の足で生活を送ることになった。

    俺は1台の車を迷うことなく見つける。太陽の光に当たって真っ赤なボディが薄い膜を張ってどっしりと構えられた重厚感があるギラつくヘッドライトがダンディな車。ここでは滅多に見かけない割りには、一般車とさほど形も大きさも目立つ要素はない。自宅から遠い公立高校では自慢の足では歩ける距離でもなく(勿論走れる距離でもない)お迎えが必須。うちが所有してる車どれも、バカデカいものだったりドレスコードしか似合わないリムジンなど、まぁ浮世離れした車が多い。流石に、学校側も金持ちの車で登校は目に余るとの判断で見た目は一般車両と変わらないがそれなりに気品がある金持ちのイケてる車。つまり、惑星アンジェリア産のジープが選ばれた。

    「それでも、目立つけどな。」

    赤色の鉄屑は周りの目と嫌でも引いて、俺への関心とシルバ製薬の威厳さを撒き散らす。雑に後部座席に乗り込めば、芳香剤のホワイトムスクの香り。カーアクセサリーブランドとしては有名なものらしいが、如何にも親父の好みそうな香りでいけ好かない。臭ぇ、まじで。俺が座る後部座席に荷物などは一切なく、俺を乗せて送り届ける為の車であることが嫌でもわかる。運転手の野郎も車の内部を傷付けまいと、最低限の場所しか触っていない。ドアに寄りかかって暗い膜がかかった外を見やる。こちらに指を向ける男子生徒達が目に入る。

    「あ─くるーテ──兄のじゃ──?」

    「ほ──だ!!─ジュ兄の─!!」

    無駄に遮音性が高く上手く聞き取れないがこちらをまるで見たことのあるような目(決して羨望の眼差しではない)をしていてドキッとする。金持ちの車を目にして楽しそうにするか普通。と罵る言葉しか出てこないのに彼らの言葉に硝子越しに耳を傾けしまうのは素直じゃないわねと脳内のシェにどやされる。しかし、車は無慈悲にも静かにエンジンを鳴って走り出した。言葉の端々からテジュニイ?だと呼ばれる人物を連呼しては騒いでいたという事実だけを俺に教えて。

    テジュニイね…そいつ?がこんな物好きな車を所有してるかは知らないが、何かは関係ありそうだな。

    ───面白そうだ。

    こんなクソ親父の化身の車から心の揺さぶられるとは思わなかったが、いい退屈しのぎにはなるだろと心の片隅に閉まっとくことにした。久し振りに、俺の時間が少し動いた気がした。

    ***

    「ミラ姉ー!」

    「おかえり、さぁ!帰ろ!」

    チョコレート色の軽自動車に孤児院の子達を乗せて、アクセルを踏む。テジュンからは、オンボロ車だとバカにされるけど私の愛車である。ぷっくりとした瞳のようなヘッドライトがお気に入りの可愛い車なのに、その良さが分からないなんて相変わらず自分の世界以外には興味ないのね。ミスティックに育てられた私達は孤児院を出た後も、親孝行として孤児院の子供達の送り迎えをしている。ミスティックが経営する孤児院から公立の高校までは多少距離がありバスや電車で行かせるとなるとお金がかかってしまう。私とテジュンは孤児院育ちながらも、生活は以前よりグレードアップし余裕がある。ガソリン代なんて大した打撃なんてないし。最初、ミスティックは反対してたけど私が持ち前のエネルギーで押し切り、今の送り迎えの活動を始めた。仕事はテジュンと同じだけど、パートみたいなもので結構自由。送り迎えの時間に合わせて仕事を動かせるのも楽だけど、たまに送り迎えにいけない日がある日はテジュンに任せてたり。嫌な顔はしないものの、子供達には少し怖がられてるらしく、よそよそしいと不貞腐れていたのは面白かった。仕事中や外出先では眼鏡をかけてるからよって教えてあげたけど、眼鏡がないと落ち着かないと一点張り。彼にとって眼鏡は仕事、裸眼は自宅と決めてるらしい。普通、逆じゃない?変な所でひねくれてるのはまだ子供だなとつくづく思う。後ろに乗車してる子供達の方が大人に見えてくるわ。バックミラー越しに彼らを観察する。今日の出来事を交互に話し、はしゃいでたり、宿題の話をしたりと青春を満喫してるようだった。

    「ねぇねぇ、ミラ姉!そういえば、学校の駐車場にテジュ兄の車見た。」
    「俺も見たよ、デカくて真っ赤のやつ。」

    私が彼らを注視してたのに気付くと、声を張り上げて話しかけてきた。無邪気な表情に絆されそうだけど、テジュンが今ここにいることほまず無い。

    「テジュンの?あいつは今仕事中よ。居る訳けないでしょ。」

    えー!テジュ兄のじゃないの!?後部座席で驚く2人は顔を見合わせてちょっと落ち込んでいた。なんやかんやで好かれつつあるじゃない。私より大人びた彼が高校生達には身が強ばってしまう対象なだけで本当は大好きなのかも。テジュン本人が聞いたら、ニヤつくかもね。微笑ましい光景を垣間見えて口角が上がるが、正直”テジュンの車”に引っ掛かりを覚えていた。見間違いという訳では決してない。高校生達は幼子ではないし、似たような車なんてこの世に万と存在する。一般の車なら尚更。けど、性能厨のテジュンが惚れ込んだ車を乗り回す奴がそんなにいるのかしら。しかも、今まで彼と同じ車種を近場で見たことないし、ルビーのボディは1度見たら忘れない自信がある。…あぁ!いいなぁ!私もあの車を運転したい!新車特有の香りに包まれて、心地いいチェアと微力でも動くアクセルを踏んで発進しても反動が少ないんだろうなぁ!!!!思考を巡らすうちにあの車への憧れが溢れ出て、自然にハンドルに力が入り掌がじんじんと熱くなる。

    「ミラ姉!ミラ姉!ミラ姉ってば!」

    耳の奥で私の名前を呼んでる気がする。焦りからか私の座席を揺らし、後部座席から顔を出して呼び掛けてるようで。車の動きが不安定になっていき、同時に憧れから肥大化したイライラが私を襲う。あぁ!もうぅ!

    「危ないからやめてよね!?」

    珍しく声を張り上げてしまった。一瞬、顔がくしゃと縮こまる子供たちにやってしまった感で全身を徐々に冷やしていこうすると、冷水ではなく氷水が掛けられた。

    「ミラ姉、家過ぎた。」

    フロントガラスは知らない街並みを映しながら、私を嘲笑うかのように白く反射していた。
    車が嫌いになりそうだった。

    ***

    帰宅したら、温かい夕食がいつも待っている。今日は生姜焼きをメインにした定食メニュー。スーパーで安く売られている豚肉の細切れと生姜焼き専用の仄かに辛みが感じられるタレと一生に和えた1品なのだが、実に美味い。白飯が元々身体に合っているようで、腹持ちがよく白米独特の噛めば噛むほど染みでる甘みがこれまたタレと相性がいい。幼き頃は洋食を中心だったが、孤児院を出た直後にミラは他の食文化に興味を持ったらしくその際に和食に出会った。彼女の健康志向(まともに食事に取らなかった俺を心配して拗らせた)が和食とマッチしたのだろう。俺との共同生活を初めてから必死に勉強してたのを覚えている。

    「今日ね、孤児院の子達がテジュンと同じ車見たって。」
    「同じ車…?あぁ、同型の奴をみたってことか。珍しいな。」
    「あんたと同じ車、乗ってるなんて世の中は案外狭いのねえ。」
    「…。」

    不躾な日常的な返答に豚肉を持ち上げて口の中に放り込んだと思ったらすぐ白飯を掻き込むミラに様子の変化に身体が強ばる。雑だの粗暴だとと形容はしているが、飯を食べる時は比較的綺麗な彼女が急に豪快に食べる姿はなんと言うか漢らしいというか怖いというか…。思わず背筋が伸びてしまう。

    「もしかして、昨日の車の件怒ってるのか?」
    「別にぃ。」

    両手を重ねて軽く頭を下げれば、彼女はガシャッと食器の耳鳴りにも似た音をわざとけたたましく鳴らしてシンクに突っ込むと洗っておいてね。リビングに言葉を落とす。暫く、箸さえも動かせ無かったが冷めぬうちに食べて仕舞わねばとせこせこと器用に手を動かす。

    ミラがちょっと先日の出来事を引き摺ってイラついてるのはいつものことだと思考の隅に片付ける。とりあえず、明日の夕飯は俺が担当しよう、それで和解だ。これは問題ない。それより、彼女が先に話題を出した愛車の話の方が気になる。

    「俺と同じジープか。」

    興味がない訳ではなかった。出来るなら、その持ち主と話をしてみたい気持ちもある。公立高校であんな目立つ車を持つ親の理由なんて並大抵のものではないのは明白。知りたがりの性分か疼いて仕方がない。長年に渡って人間の知り合いを作れる機会かもしれない。決して友達が欲しいとかじゃなくて、車について話し相手が欲しかっただけだ。ミラだと直ぐに、拗ねてしまうからな。気付くと、箸が軽快にステップを踏んでいる。

    最後に味噌汁で腹を温かくして、ご馳走様と一言。キッチンで後片付けを細かく行う為に白生地にネオングリーンのラインが上下に太くデザインされているエプロンに手を掛ける。(俺に似合うとミラが誕生日プレゼントにくれたが、正直派手過ぎるが着ろ着ろとせがんでくるミラに負けてとりあえず身に付けている)コックを捻って水流でシンクを震わせる。食器が水に中でカラコロと擦れている中、ダイニングテーブルの隅に置かれたスマホから1件のメッセージ。仕事の内容かもしれないと少々焦りつつ、ミラに言われた通りの手順をこなす。せかせか動いてロック画面を開けばお決まりのライムグリーンのアイコンからで、一言。

    『言い忘れたけど。明日、子供達のお迎えよろしく。』

    「…怒る前に、これ先に言え。」

    女って生き物は良く分からないが、早速ドッペルゲンガージープと会えるチャンスが巡ってきたと軽くガッツポーズをしたのはここだけの話。

    ***

    ──テジュニイ。
    ───テジュニイ…テジュニイ…ねぇ。

    窓を打ち付ける小さな粒が無数に広がってパラパラと軽い音楽に世界史の爺教師の声も相まって子守唄となっている午後の授業。生徒の大半が寝てしまうのも無理はない。教科書を読んで、黒板の字をただ写すだけでいいとか寝てくださいと言ってるもんだろ。俺もねむっちまいそうだが、こんな暇にも同然な時間にあの言葉をどうしてか思い出してしまう。謎の二人組が何かしらの勘違いでこちらに嬉々とする視線も忘れられない要因の一つだが、それ以上に妙に響きがいい名前らしき単語がずっと引っかかっている。…また、会えるじゃないかって。馬鹿らしい考えだと思う、正直。けど、昨日の衝撃はおれにとっての人生の転機のような気がして…なんーてな。おとぎ話じみたものを今更、信じるなんてな。あの学校にいた頃よりは少し希望を持てたちゃ持てたのかもな。黒板の上にある大きめのアナログ時計に視線を移すと終了時刻の5分前。SHRが終われば当たり前だが放課後だ。嫌なお迎えが俺にも訪れるのだが、少し例の車を探す時間はくれるだろし、テキトーな理由をつければいいだけ。そんな甘い考えを脳の片隅置くと、目覚ましチャイムが鳴り響いた。作戦、とまではいかないが俺の人探しならぬ車探しが始まった。


    結論から言おう、見つからなかった。
    お決まりの帰りの号令のあとに、階段を機械の足で早く降りて玄関を抜ければ目の前には大きな駐車場。一台一台、チェックしてあのデカイルビーを探すが中々姿を表さない。つか、いねぇ。しかも、いつもなら放課後の時間に合わせてピッタリの時間に止まってるはずの親父の化身さえも見当たらなかった。それは好都合ちゃ好都合だが。他の生徒を迎えに来た親かなんかの車が俺の横を通り過ぎてはに一瞬だが不審な目を向けているののも気づかずに何周も駐車場を歩いたがいない。

    今日はだめだな、つまんねえ。

    車探しにも飽きてしまい(と言っても探したのは15分程度)迎えの車を催促してやろうと、運転手に電話をかけるとベルが1回もならずに繋がると耳障りな爆音と謝罪だった。どうやら、付近で事故があり渋滞にハマってしまっただとか。必要以上に謝ってくる運転手にウザさを受け流しながら電話を切る。時間が予想以上にありそうだなと、玄関前に常設されているベンチで悩む。これ以上、車探しはやるだけ無駄だし時間を潰すだってそんな楽じゃない。時間だけが過ぎてくれと考えることを放棄して、ただ真っ直ぐに同じ光景を目で追う。瞳に映るのは見知らぬ多くのカラーリングが施された鉄の塊にそれに笑顔で乗り込む似たような服を着た子供らだ。帰ることがそんなに嬉しいのか、みんなして笑ってやがる。帰るということが、俺にとって心を濁してしまう負の単語であって過去と向き合うことに臆病な俺が拒絶して。

    「帰るのしんどい。」

    その言葉を落とせば、見知った車が視界中央に現れる。ほら来た。渋滞にハマり帰りが相当遅くなると高を括っていたが、案外速かったようだ。帰るという行為は絶対纏わりついて、俺を不快にさせる。嫌でも、帰らないといけない。そこに帰る場所があるのならば、帰りを待っている人がいるのであれば。ルビーが駐車場の白い罫線に沿って停めるの確認すると重い腰を上げる。のろのろと親父の化身の後ろ姿に向かって後部座席のドアを開ければ、いつも鼻に付く香りが。

    ───しない。むしろ、新車特有の革やメッシュの生地の真新しい匂いがする。後部座席には誰かを乗せる為に、大きな物こそはおいていないが、女物の趣味でもあるのだろうか。フラットアウトベアのような平たい桃色のうさぎぬいぐるみが悠々と座っている。ぬいぐるみの視線を追うと運転席に座っている雑に整えられられた黒髪にバックミラーに映る黒縁眼鏡。ネクタイが胸ポケットに差し込まれてあたかも雑に着せられてるようなスーツ姿。だせぇ。あー、そんなことよりもだ。こりゃ…乗り違いってやつだ。それが全身で分かると本来なら恥ずかしくなってここで謝るべきなんだろうが、俺は自分でも驚いてしまうような本心が出てしまった。

    「アンタ、誰?」

    ***

    最初は孤児院の子供達だと思った。だが、すぐに違うと気付いた。安全確認の為のミラーが侵入者を映すとは防犯カメラとなり俺に視覚情報を伝える。翡翠色の目立つ髪色に皺が殆どない白いシャツ、口元が半開きで驚いてる様子。少なくとも孤児院の子達なら、もっと明るい声で「ただいま」の一言ぐらい言うはずだ。だが、それが無いとなるとこの不良じみた少年は何かしらの間違いでこのドアを開けてしまったらしい。というか何かしらの間違いってなんだ。一瞬の出来事と不躾な投げかけられた疑問に俺の時間が止まる。振り向いて声をかければいいのだが…生憎、陽キャ容姿の学生と話せるほどのコミュニケーション能力はない。あったら、ボッチになってない。相手の方は顔を顰めたと思うとぱっと顔が急に明るくなる。

    「もしかして、アンタが”テジュニイ”か!?」
    「そ、そうだが?君も孤児院の子か?」

    テジュ兄。その呼び方をしてるのは孤児院の子供達だけだ。もしかして、彼も俺が知らないだけで俺の義理の弟にあたるのかもしれない。ミラー越しに監視するのはやめて、実物とコンタクトを取ろうと振り替えると彼はJAJAJAと独特な笑い声を車内に響かせながら、そのままシートに座り脚を組んで愉快に話し始めた。

    「孤児院?そんなの知らねぇーな。それより、アンタが”テジュニイか”か!思ってたより、芋臭くて笑っちまった!俺、アンタを探してたんだぜ?」

    俺を探していた?何の為に?見ず知らずの学生に探される理由は勿論ない。頻繁にここに訪れてる訳でもないのだがら、彼の言葉は俺にとっては矛盾だらけだ。しかしそれ以上に、土足で他人の愛車に乗り込んで居座わられた挙句、”芋臭い”って…不快を通り越して呆れてくる。孤児院子達を迎えに来ただけなのに、こんな厄介な生徒の相手をしてる場合じゃない。とりあえず、彼を追い出さなければと言葉を紡ぐ。

    「俺には待ち人…ここに通っている知り合いの子供達がいる。俺はその子達を迎えに来たんだ。君の相手をしにきたんじゃない。」
    「知り合いの子達?迎え?そうか…そうか!そういう事か!!!JAJAJA!!昨日、俺の迎えの車…これと同じ車種の奴を見て興奮混じりに近付いてた奴らがいてな、その時に″テジュニイ″って聞いたんだ。」

    こっちに指を向けて飛び跳ねていたんだぜ。と自慢気に話す少年は俺に語ってるつもりなんだろうが、内容がごちゃごちゃで何を言ってるか分からない。昨日?同じ車種で?孤児院の子達が騒いで?…そう言えば、ミラがそんなこと言ってた気がする。そして、俺がそれを聞いて友達が出来るかもしれないとか、そういうくだらない妄想して…あああああ!!!

    「俺のばーか!!!!」
    「うぉ!?どうした、急に。」

    少年は発狂する俺を瞳に映して心配している少年は俺に”芋臭い”と表現した不届き者はあの例のドッペルゲンガー車の学生だと察する。そうすれば、全て繋がる。彼が俺のジープに間違えて乗り込んでしまったこともそうだが、必要以上に面白がる姿と「テジュ兄」という愛称を知っていることにも合点がいく。けど!こんな早く会えるとは思ってなかったし、しかも親御さんじゃなくて学生の方と先に出会ってしまったのは誤算すぎる。

    「い、いや。何でもない。そもそも君は何で俺を探してたんだ?」

    咄嗟に誤魔化すが、後部座席の不審な瞳で俺を閉じ込めるが気にしないことにする。とりあえず、この状況を整理したい。不良少年が間違えて乗車してしまったのだから追い返す選択肢だってあったはずだがこの時の俺は探していた理由を知りたかった。綺麗な緑色の目を丸くしたと思うと三日月になって淡々と答える。

    「んぁ?そんなの面白そうだと思ったからに決まってるじゃねぇーか。こんなちっぽけな公立高校にわざわざ目立つ赤色のジープ乗り回す物好きな奴に興味があっただけだ。」

    学生特有の好奇心が彼をここに呼び寄せた、ということだろうか。ここに乗車してからフレンドリーなオーラが滲み出て俺の苦手意識を加速させる。最初からグイグイ来られると怯むものだ。住む世界が真逆なのだから、特に。眼鏡のブリッジ人差し指で上に軽くあげて、不安な気持ちを吹き飛ばして言葉を返す。

    「あぁ、そうか。教えてくれてありがとう。それで、俺に会えて満足したかい?」
    「いいや、テジュニイ。こんな奇跡にも近い出会いをしたんだ。もう少し、遊ぼうぜ?」

    前のめりに身体を持ってきて運転席に居る俺との距離を詰めてくる。キスにも似たような距離でドギマギする。互いの目を覆うフィルターで、距離感が和らげられるとは驚かない方が可笑しい。反射的に俺は身を少し引いて落ち着けと彼の静止して元の位置へ戻す。

    「え?でも、君もお迎えとかあるじゃないか?この車には間違えてドアを開けたんだろ?なら、親御さんとかの車を待った方がいいん───」



    「帰りたくない。」



    さっきまでの柔らかな雰囲気が引き締まった。子供が持ってはいけない哀愁を帯びてハッキリと口にした拒絶。興味だの遊びだの、車内で騒いでた彼は何処にも居なくて別人のようだ。息を1つ呑んで良識な大人の言葉を吐く。

    「でも、心配とかするじゃないかな。はは。」
    「あのクソ親父が心配する訳ねぇーよ。テキトーに連絡だけ入れときゃ、何も言われねぇよ。」
    「そ、そうかい。」

    かなり複雑な家庭環境なのだろうか。初対面相手に”クソ親父”なんて表現する学生の影にある深層に興味が湧くが安易に探るような真似はご法度だと胸の内に仕舞う。不良少年は眉を下げ今までの態度とは違う大人しさで半開きの口を微かに動かして声にした。

    「なぁ、テジュニイ。俺、行きたい所あるんだけど連れて行ってくれねぇーか。」

    最悪、そこで降ろして貰っても構わないと添えて頼んできた。片道切符だけでも欲しがる彼に俺はNoとは言えずにいた。孤児院の子達を思うのなら断るのが賢明だが、寂しそうな影を抱えてる緑髪の少年を追い返す程の度胸がないのは今までの対話で分かりきっていた。悶々と悩んで答えを引き伸ばすことしか出来ない俺の判断能力の低さに頭が痛い。正面のガラスには薄く縁取られた俺がいた。顔はいつも以上に堅くて視線が泳いでいる。見苦しい姿は大人だ何だと言ってる場合じゃないだろと語っていて息が詰まる。

    「あー、いや…俺の言葉は忘れてくれ。見ず知らずのアンタに頼むことじゃねぇーな。」

    笑いながら首元を掻いて誤魔化す彼にチクリと胸を知らない棘が刺さった。今までに感じた事ない痛みは彼の笑みで更に奥深くへ。この感情に名前を付けることも忘れて俺は自然と助手席に投げた携帯端末に手を伸ばしていた。深めの赤髪の女性の顔を思い浮かべて呼び鈴を鳴らす。後ろの少年は、機敏な俺の動きに戸惑ってるようだが今は無視だ。出てくれと必死に願って端末を握る手に力が籠る。

    『この時間に電話なんて珍しいぃ、どうしたの?子供達は?』

    3回の電子音の後に聞き慣れた幼馴染みの声。仕事の最中ではなかったらしく、比較的落ち着いた声でこれからの捻り出す言葉への自信が湧く。意を決して、彼女に伝える。

    「子供達はいない…。あの、すまない…ミラ。急に用事が出来たから迎えにいけない。」
    『えっ!?もう下校時間よ!!そんな急に言わないでよ!』
    「本当にすまない、後で埋め合わせする。」
    『埋め合わせって!そんな気軽に言わな────』

    多分、後で怒られる。いや、絶対に怒られるな。テジュンらしくもない行動を数分話しただけの少年から触発させるなんて思ってもなかった。しかし、先程までの嫌なわだかまりはどこかへ飛んでいったようで自分の行動が悪くなかったと安心する。

    「いいのか?」

    動揺を隠しきれてない不良少年は前屈みに運転席と助手席の間の隙間から顔を覗かせた。顔近っ!と邪念が脳を掠めて身を少し引きつつ、冷静に今後の予定を彼に伝える。

    「良くはないな。だが、無理矢理頼まれた仕事を同居人に押し付けたんだ。暫く、俺も帰れそうにないし帰りたくない。時間を潰す為にドライブしようと思うんだが、行きたい所はないか?」

    口をパクパクさせて目を見開いたかと思うと、目を細めて出会って数十秒後のあの興奮にも似た声で悩みもなく告げる。

    「海…海に行きてぇ!」

    海か、いいな。たまには夕陽と同化しようとする姿を拝むのも悪くないと俺の中で腑に落ちて首を縦に振る。彼がこのタイミングで学生らしくもない海を選択したか謎に包まれたままではあるが。

    「了解。それと俺は君の”テジュ兄”じゃない。子供達以外にその名前で呼ばれるとむず痒い。俺の名前はパク・テジュンだ。」

    名乗れとルームミラーに映るライムグリーンを睨みつける。他人のパーソナルスペースに入り込んだんだ、大人らしい嫌な振る舞いをしたって誰にも咎められない。彼は嫌な素振りを見せずに、相変わらずの生意気な態度を貫いたまま言葉を紡いだ。

    「俺はオクタビオ・シルバだ。オクタビオって呼んでくれ。これからよろしくな、テジュン。」

    これからの行き先へついてなのか、俺達の関係のその先を示唆しているのか真意は掴めないが俺はシフトレバーを下に降ろして返事の代わりにアクセルを踏み込んだ。

    帰ることを躊躇った2人の逃避行が始まった。
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