甘え上手 ぎぃ、とベッドの軋む音が荒い呼吸を一瞬だけ掻き消す。
「はぁっ……」
それは僕が身体を起こした時になった音で、月明かりの中、僕の下でうつ伏せになり同じく息を切らせている彼を見つめた。
白い肌は既に蒸気し、しっとり濡れている。襟足から首の麓には花弁が散って色鮮やかに染まっていた。彼を形取る線はしなやかな弧を描き、それを目で追えば先程までシーツを強く握りしめていた手が力無く横たわっている。少し覗く横顔も、やはり虚な表情で息を繰り返していた。
「フランム、大丈夫か」
柔らかく頭を撫でても、消えそうな吐息がかろうじて聞こえる程度だった。いつもなら、途切れる事なく文句を言いながら手を叩かれるというのに。
今宵は仕舞いにしよう、と改めて心うちで頷く。思えば部屋を訪れた時から、明らかに彼は疲弊していた。目の隈は一層濃く、初めに映し出された肌は青白さが勝っていた。想像より鍛えられた身体も、今日は覇気を感じられない。
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