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    navy_konno

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    navy_konno

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    なんか書いている

     ウォロの捜索が進まないからといって、別に村の人々を責める気はなかった。一緒に探してくれと頼むつもりもない。なんというか、そういう人たちなのだ。たとえウォロが村にとってどれほど有益な人間であったとしても、この状況に変わりはないだろう。
     村社会において『ウチ』と『ソト』という区別は、簡単には崩せない。いわば、村を守るために必要な防衛反応とでも言おうか。生まれついた土地を離れ、新天地に築かれたこの村は、何よりも大切な彼らの居場所である。それが、祟りや疫病、悪人、ポケモン、その他考えうる有害な何かに、侵されたら——?
     そんなの、絶対に許せない。認められない。だから過剰なほど殻に籠る。一から村を作った共同体——ひいては、村に生まれ村に死ぬ者だけが、信の置ける『ウチ』なのだ。そこに、テルやウォロは加われない。テルがその生涯を村に捧げたとしても、この世界に時空の歪みが生じる限り、誰かはテルを疑い、『ウチ』とは認めないだろう。それはもはや、仕方のないことだ。
     同じように、テルはウォロを責めるつもりもなかった。どこの『ウチ』にも属せないことは、自由であると同時に、どうしようもない孤独に苛まれる。自分の拠り所を世界に求めては、拒絶され、その度にもう二度と寄る辺など欲すまいと思うのに、希望を完全に捨て切ることはできない。生ある限り、自分のルーツを求め続ける。己の根ざす場所が、この世界にもあるのだと、信じたいのだ。彼にとっては、それが神話の世界だったのだろう。

     その点でいうと、テルの『根』は、時空を跨いだあの瞬間に——ぷつん、と切れてしまった。
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