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    blue_hair_tofu

    @blue_hair_tofu

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    blue_hair_tofu

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    前に描いてた「死神の口付け」絵を元にした雰囲気SSドス
    捏造・幻覚・妄想のオンパレードだよ!!

    死神銃声と爆煙。壁一枚越しで行われているのは血と暴力飛び交う遊び。俺のすぐ傍で惚れ惚れするような手さばきで装填される銃弾。音だけでも分かる。その動きに合わせて漂う血の匂いが鼻腔をくすぐった。
    ゲーム中盤、1つの部隊を壊滅させたところへ次から次へと別のが戦闘に割り込んできた。何とか仲間と連携していたがさすがに限度というものがある。1人は運悪く敵に囲まれてしまいバナーに。時間が経ってしまい復帰させることは叶わない。俺の右腕……義手はどうやら先程の激務でイカれている。戦場でできるような原始的なショック療法では直りそうは無い。
    「全く無様だねぇウォーリー。それでもアタシと同じサルボの血が流れてるってのかい?ふざけるな!」
    人生で一番聞き馴染みのある声が鼓膜を叩く。
    「るせー。お前が余計なことしてなきゃもっと上手くやれてたさ」
    「アタシのせいにするのかい?はっ、全くヤな奴だな」
    つい先程身を隠したところだがシールドも回復し終わっているようだし動けそうだ。
    「で、いつまでここにいるつもりなんだ?次があるだろうに」
    軽く頭を傾けて問う。マギーはマスティフの銃身をペットでも撫でるように指を這わせた。
    「さっき散々ケツに撃ち込んでやったんだがアタシとしたことが仕留め損ねたんだ。でも懲りてないようだねぇ。まだ近くにいるはずさ。そいつを殺ってからだ」
    彼女のブーツの先が蹴り殺されたであろう者の血で輝いている。
    「はぁ、本当にこわい女だ」
    「お前こそそんなこと言ってる場合じゃねぇだろ。ホラ、下向いてるんじゃねぇ!」
    「ぐ……」
    グイと無理矢理引き上げられた反動で口に溜まりつつあった血が床にまとまって落ちた。不機嫌な形につり上がった眉が俺の視界に入る。
    「時間稼ぎのおしゃべりはあとどれぐらい続けられるんだい?その様子じゃぁ……どっかでコソコソしてるお仲間もどうせ間に合わないだろうけどねぇ」
    この女、同じ部隊では無い。つまるところ"敵"だ。さらに言えば俺のダウンを取ったのもコイツだ。こうしている間にも俺の失血はどんどん進んでいた。
    「どーせ腑抜けで馬鹿なアンタをわざわざ助ける為に近くにいるんだろ。見つけ出しておんなじように可愛がってやんよ」
    「おまえ……たのしんでるな……?」
    「アタシがこのゲームを楽しんでるように見えるのかい?ああ、随分とまぁ、頭がお花畑になっちまったようだなぁ〜?」
    くるくると視線をわざと泳がせて笑みを浮かべた。今のところこの時間稼ぎは上手く行っていた気がしていたが違うらしい。この女は俺にとどめを刺す気配もなくここから離れる様子も無かった。先程の戦闘で手持ちの物資も怪しい。今、このマギーと戦うことになるのはまずい。待てというシグナルを送ったせいか、駆け付けようとしていた仲間は様子を伺っている。彼女の表情がふっと消えた。銃口が顎先に当てられる。金属の冷たさが己の体温に混ざる。黄色っぽい瞳に地に伏した男が映っているのが見えた。
    「アタシはアンタを分かってたつもりだったのかい?……そうかもな?」
    囁くように言った言葉は独り言だろうか。
    「…………なぁ、マギ……」
    口を開こうとしたが思うように舌が回らず代わりに吐血を繰り返した。赤黒い水たまりがさらに広がる。体を満たす苦痛に思わず上半身が傾いたがそれは長く続かなかった。彼女は銃を退けると、今度は締め上げるように乱暴に首を掴んできた。その細い手指のどこにそんな力があるのか。酸素を求め反射的に開く口を彼女の唇が塞いだ。ああ、火薬と土煙。そして彼女の匂いがする。一瞬遅れて困惑の感情がせり上がってきた。コイツは幼馴染であって恋人なんかじゃない。少なくとも俺は恋愛対象として見た記憶は無かった。さらに言えば俺の片腕を奪い今でも殺したがってる奴だ。
    「分からないよアンタが……」
    分からないのはこっちの方だ。一体何なんだ?俺は今どんな顔をしてる?教えてくれよ。朦朧とする意識も相まってきっと情けない顔をしているに違いなかった。
    「何勘違いしてんだい?アタシはアンタの死神だ。ゲームじゃぁ本当の死は訪れないんだろう?ならお前の心を殺してやる。何度も何度も……いつかアンタが​​─────」
    今この女はどんな表情をしていたろう。全くただの嫌がらせ、悪ふざけか。つくづく嫌になる。締めあげられたままの気道が呼吸を妨げている。俺の血で染まった唇がまた至近距離にあった。マギーはリップに青系の色を好んでいたのだが赤も似合う女だった。特に深みのある、ちょうど今つけているような黒っぽい赤が特に。変なものだ。嫌悪と同時に何かを懐かしむ自分がいることに。まともに返事が出来なくなったことを察したのだろう。突き放されるとそのまま重力に従って体が傾くのを感じる。畜生、視界が暗い。嫌味の1つや2つこぼしていったかもしれないがよく分からなかった。少しの間の後鳴り響いたショットガンの音を最後に何も聞こえなくなった。


    「どこで何してたのさ!大変だったのよ」
    「よォ!アンタが道草してる間にこっちは片付けちまったぜ!」
    眉間に皺を寄せたライフラインと落ち着きのないオクタンがアタシの姿を見つけて駆け寄って来た。今は同じ部隊で仲間だ。
    「マギー、あなたそれ怪我?ヘルスドローンなら出せるよ」
    あれだけサルボを毛嫌いしているのに手を差し伸べられずにいられない性。親と対峙することなくその辺で呑気に暮らすことだってできたろうに。
    「アタシんじゃねぇ。気にすんな」
    「なんで口にだけ付くんだよ。まさか敵の首を食いちぎったとかじゃねぇよな!」
    「その口を食ってやってもいいんだぜ」
    はしゃいでる若者をむんずと銃で退ける。ライフラインが何か言いたげにこちらを睨んだが無視する。
    「残り部隊はあと4つかい?全く根性のない連中だね」
    「そんなこと言ってる暇あるならさっさと移動したら?もうリングが来るよ」
    「おう!アネキが言う通りだぜ!この俺に置いてかれたくなかったら口より足を動かさねぇとな!」
    「ちょっとオー、待ちなさい!スナイパーいたらどうすんの!」
    駆け出す二人の背中を少し遅れて追う。若くて、勢いがあって、前しか見ていない。お前たちの友情はいつまで続く?この閉ざされた戦場で今日もアタシは見ている。顎を伝っていた血を拭うこともなく。
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