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    さしみ

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    さしみ

    DONEアレクくんの最初の日の話
    サラオスを臨む昔から、大きな生き物に心惹かれる性質だった。

     子供の頃に父親に『サラオスの亡骸』を見に連れて行ってもらったことがある。
    『サラオスの亡骸』というのは、高地ラノシアにある巨大生物の亡骸のことで、『サラオス』というのは、神話において海神リムレーンに命じられて海を作ったとかいう、巨大な海蛇のことらしい。その巨大生物の亡骸は、神話にあやかって名付けた別物だという話だが、本物かどうかはどうでもよかった。とにかく子供の頃の俺は、世界にはこんな生き物が存在するのかと、未知の巨大生物の骨を見ていたく感動したものだ。

    「これな、実は俺が倒したんだよ」

     『サラオス』を眺めながら、父親がそう言った。この時の俺は十歳にもなろうかという頃で、大人の言うことを疑いもなく信じる年頃はもうとっくに過ぎていた。 父親は、若い頃には冒険者として各地を飛び回っていたようだが、この時すでに、夜は酒場を営みながら、昼は近隣のギルドで小さい依頼を受けて畑を荒らしたり、旅人を脅かす魔物の討伐などを請け負うのが基本の生活になっていて、どう考えてもこの人にそんな気概があるとは思えなかった。
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