真夜中の森で君を覗く人どさっ。
フェイクは誰も見えないような暗い場所で今日始末した黒い袋を捨てにきた。
(はぁ。勢いで相手を殺しちまったがつまんねぇな…)
重いため息を吐いたあと、この場を離れようとする。そもそも元々勢いよく女だと勘違いして絡んできては近づいてきたのが悪いのだと言い聞かせて帽子の面を押さえつけた。するとかさりと背後の低木が揺れるような音がした。
「、なんだ…?」
今の時間、どんな動物も人間も寝てる時間帯なのに物音がするのもやけにおかしい。ゆっくりと音のした方へ近づくとガサリ。と片目を隠した少女?少年?どっちともつかずの顔立ちの人間が顔を出した。
「おやおやぁ息も殺していたはずだが私とした失態が…バレt」
ゴッ、すぐに相手の首を掴みゆっくりと力を加えていく。
「お前は一体何者だ?なぜ後ろをついてきた??」
「が、ガハッ!早速出会い頭に手荒な質問方法をするねぇ!!僕はしがない作家だよ!!!人殺しアンデットくん!?」
ゆるりゆるりと首を絞め続けているのに片目隠れ野郎の口は閉まらない。だが彼の言った『アンデット』という言葉に目をハッとし、手をぱっと離した。
「どうしてオレのことを『アンデット』と呼ぶ…??」
「ごほっ、ごほっ…やはり勘は当たっていたか…手を離してくれてありがとうアンデットくn」
スッと呼び方が気に入らずもう一度首を絞めようとする。だが方法を覚えたのかすぐに避けられてしまった。というかなぜか背後にいる。
「え?勘??」
「いやぁ、無礼な態度をしてしまって申し訳ないねぇ。そうだよ、完全に私の勘。でも君の呼び名が『フェイク』というものじゃあ君が偽物みたいで可哀想だと思ってねぇ…だから君の人を殺すときの雰囲気を取ってそう呼ぶことにしたのさ。」
片目隠れの人間は勝手に付けた呼び名の理由を答えた。それと「だけどそこにヒントが転がってるというのにすぐに潰してしまうのはもったいないよ?」という小言も呟いた。
「にしても余計なお世話だっつーの!!!オレはあいつの偽物で…ニセモノで…」
「おやぁ。混乱させてしまって申し訳ないねぇ。あー、でも私はもうそろそろ眠くなってきた。深夜徘徊もそろそろ終わりにするよ。」
フェイクは頭が混乱する。自分の存在意義を確認しようとして妙な記憶が頭によぎったからだ。いやそんなのわかりきってる。オレはあいつの抜け殻を使ってあいつを演じている。オレはあいつの偽物。だけどあいつの今までの記憶が邪魔をしてくる。
そして意識をハッとした先にはさっきまで首を絞めていた片目隠れの不審者がいないことに気がついた。
(とはいえあまり好奇心で近づくのは良い判断ではなかったな…でも楽しめたよ。だってフェイクくん、君は僕の力じゃ他の世界の様子が覗けなかったもの。)