暗闇と安寧ガラガラと引き戸を開けた。俯いた先にはいつものように不法侵入している三瀬がいる。
「お疲れ様です。”また”、上手くいかなかったのですか?」
「あぁ、そうだよ。」
ガタンと全てを壁にぶつける。三瀬の言葉もやはりいつもよりも憎々しい煽り言葉にしか聞こえない。
「はぁ、毎回ですけどあなた、そこまで他人に同情しても何も成果は得られないと思いますよ?」
「…あぁ。そうだな。」
慰めなのか財団らしい『正常』を叩き込みたいのか三瀬はまた余計な一言を呟いた。だがその返しでさえも俺は苦笑を描く。
そして疲れたのか俺は自分のデスク前にある大きな椅子に持たれた。そしてアイマスクを取る…がしかしいつも通り眠れないし目の前の暗闇も不安にしか感じない。そこでぎぎぃと客人用の椅子が動き、嫌いな音を醸し出す。そしてマスクしたまま麗人の声が耳元に囁いた。
(何を努力してもあなたは美しいと思いますがあまり無茶はしないように。)
その声の主、三瀬はそうスタスタと行って部屋を去ってしまった。普段は驚くところだが
(あぁ、当たり前のことだろう)
と返したかったのを思って目の前の暗闇に安寧を任せることにした。