暗闇と嘲りゆっくりと目を開ける。天井を見上げるとそれは暗闇そのものでそして隣にいたのは顔立ちの整った妖しい青年であった。
「?!」
「おや、『おはようございます』といったところですかね?案外お目覚めが早いようで。」
何もなかったのにスラスラと青年は話す。というよりここはどこだろう?確か廊下を歩いていていきなり倒れたことは覚えているのだが…
「すまない、君は一体誰で、ここは一体どこ?」
怯えてるままでは何もならない。とりあえずこの場で一番当たり前でまっとうな質問を出す。
「おやおや、強気な口調で。驚かしてしまって申し訳ないですねぇ。私は三瀬禄也。別のサイトで働いている博士です。訳あってこのサイトに足を運んだのですが仕事の休憩中にあなたが倒れてるのを見かけてここに運んだまでのことです。」
「とはいっても外部のサイトの情報はあまり知らないものでして…もし知っていたとしてもここに運んでいたのは変わりないと思いますけど。」
スラスラと青年…三瀬博士は理由を答えてくれた。それで頭の中で整理するがとにかく三瀬博士が自分の力で私のことを運んでくれてこの空き部屋に寝かしてくれた上に見張りまでしてくれたのが状況を理解するには合理的だろう。
「それはありがとう。つい気を失っていたのに面倒を見てくれるなんて…」
「いえいえ。」
なんて謙虚な人だろう。立ち上がって元の向かおうと先に行こうとしたが、つい三瀬博士の手元に目が入ってしまう。
(あれ?なんでタブレットなんか持っていて…)
さらに注目するとそこには盗撮のごとく精密に描かれた私の寝顔が。
「?!?!!!!」
「おや、今気づきましたか?」
きょとんとした顔をしながらも三瀬博士はニヤリと笑い続ける。
「申し訳ありませんねぇ。少しあなたが起きてる間暇だったので寝顔をスケッチしてもらいました」
驚きの事実が漏れ出し、あまりにも体が硬直してしまう。
「でも満足でしたよ。私の近くに居る人のスケッチを描いても苦しんだ顔しかしないので。」
私が固まってる間に三瀬博士は立ち上がる。よりもっと近づく形で、俯瞰するような視線で。
「それにしてもあなたとても美しい瞳をしていますね。、まるでアパタイトのようで。暗闇でも輝いている。」
調子に乗っているのだろうか。なにか自然と口説き始めている。
それからふふっと彼は微笑んだがきっと私のこと煽っているのだろう。
そして先ほど詰めた距離を離し、立ち場を直した。
「さてと。お遊びはここまでですね。そろそろ持ち場に戻らないといけないのでね。」
「あ、あなたもですよ。」
そう言って私の意識がハッとする。しかし体を一周させたころには私を助けてくれた”三瀬博士”の影はなかった。私は暗闇に取り残されたままだった。