騒がしく、胃が痛い。「本っっ当にすいません…」
情けない自分の声が道場の中に響く。事の詳細は省くが鍛錬中に弟が顔を出してしまい、受け止めきれず相手の稲月堂さんに失礼なことを聞かせてしまった。ただえさえ自分が頭下がるような家の出身の人なのにただえさえ胃が痛い。ただ、「大したことではありませんよ」と笑ってくれた許してくれたことだけは幸いだったが、どうしてもこうしても不安で、
「大丈夫なんですか?こう…気持ち悪いとか言われても。」と確認を取ったところ、
「大丈夫ですよ。そういうのには慣れているので。」と返してくれた。
けどその言葉の意味は僕にも理解できなかった。そんなことより稲月堂さんは目の前にいる弟に対して「お腹でも空いてるんですかね、飴でもいかがです?」と促していく。そばにいた弟は稲月堂さんとほとんど同じ目線で「……バカにしてる? 」と声を出したが、おとなしくもらっていった。
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