アロルクワンライ 居場所 久しぶりに帰ってきた自宅に足を踏み入れた瞬間、ひどい違和感が纏わりついた。
この家に戻るのは、確かに久しぶりだけれど、クリスマスのあの日から何一つ変わっていない筈だ。けれど、何もかもが色褪せて見える。
古びた写真立ての中に家族二人映る姿なんて、わるいゆめでも見ているみたいに頭がぐらりと揺れる。
父さんが死んだと知らされた日だって、この家はいつだって暖かく僕を迎えてくれた。
たくさん泣いた。どうしようもなく辛かった。この場所に父さんが帰ってくることがないと、信じたくなかった。
でも、この家に来てから、父さんと過ごすようになってから、たくさんのあまいしあわせで象られた思い出のひとつひとつが僕を支えてくれたんだ。この場所が、僕の「居場所」だと、信じられた。
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