白物語TRPGシナリオ『D.Q.O.の怪異』【導入】
怪談百物語…100個の怪談を完成させると世にも恐ろしい事が起こるという古くからの言い伝え。どういう因果かその百物語を完成させようと貴方たちは集まって、各々とっておきの怪談を語るでしょう。
99個目の話が終わって最後はGMの番、とその瞬間に貴方たちはゾワッと背筋の凍りつくような感覚を覚えます。気がついていないのはGMの彼一人。言い伝えが本当だとしたら大変な事になってしまいます。最後のGMの話に横槍を入れて百物語の完成を阻止しましょう。
【キーワード】
① 白いモヤ
② レムナン
③ 恐ろしい女性
④ 夕里子
⑤ 幽霊
⑥ 格納庫
⑦ コンテナ
⑧ 女の声
⑨ 女の死体
⑩ ククルシカ
【改変前シナリオ】
これはあるループの沙明から雑談の時に聞いた話です。
沙明がセツに何かやらかしてエアロックから放り出されそうになって下層の廊下を引きずられている時、何か見えたらしいんです。
それは白いモヤで、良く見ても正体は分からなかったそうです。
何とか一命を取り留めてメインコンソールに二人で戻って議論に入ると、沙明は強い視線を感じました。
それはレムナンの視線でした。なんだ男かよ、とがっかりしながらも沙明が尋ねると、レムナンは異様に怯えた様子でした。
そして言いました。「あの、さっき沙明さんの背後に……恐ろしい女性が見えた気がして……。」
レムナンの言葉に、隣に居たSQがこう言います。
「んー。過去に振った女の亡霊じゃNE?」
茶化された言葉に心当たりは無かったそうです。
けれど沙明には、あの怯えたレムナンの姿が冗談だとは思えませんでした。
「沙明。」
いつの間にか横にいた夕里子の言葉に、沙明の身体が跳ねました。
彼女は沙明の後ろを一瞥してフ、と笑います。
「な、なんだよ」と聞けば、夕里子は「気に入られたようですね」と不気味に言いました。
議論中も沙明は心ここにあらずといった様子で、先ほどのことを考えています。
沙明は幽霊の類を信じていませんでした。
そして次第に腹が立ってきました。議論が終わる頃には、あの白いモヤの正体を明かして安心したいという気持ちでいっぱいになっていました。
夜時間に、沙明は下層へ行きました。確か、あの白いモヤがあったのは格納庫のあたりだったはずだ、と向かいます。
格納庫の中には誰も居ませんでした。ここにはジョナスとククルシカ以外は近寄りません。
何故か普段ロックされているはずの戸が解放されていました。
「こっち……」、ぞくりと背中を寒いものが走ります。それは女の声でした。
他の乗員のものではない、小さく掠れている声。沙明は足が震えるのを感じました。
戻ろうか、と思うのに引き返そうとしても足が動きません。
吸い寄せられるように奥へ進むと、そこには無数のコンテナが積み重なっていました。
無意識に沙明はあるコンテナの前に歩み寄っていました。
何の変哲もない、他のコンテナとの違いも無いはずのそれ。
唾を飲んで、沙明はそれの蓋をあけました。
そこには……恐ろしい形相の、女の死体がありました。
***
目が覚めると、そこは医務室でした。
身を起こすと、傍らにはククルシカが座っていました。
どうやら気絶したところをククルシカとLeViが運んだようです。
先程あったことをククルシカに伝えようとしたところ、唇に人差し指をあてられました。
(さっき見たことは内緒だよ。)
そう示唆して微笑むククルシカの笑顔に、沙明はゾッとして、それ以上何も言えなくなったそうです。
完
【改変後シナリオ】
これはあるループの沙明から雑談の時に聞いた話です。
沙明がセツに何かやらかしてエアロックから放り出されそうになって下層の廊下を引きずられている時、何か見えたらしいんです。
それは風呂上がりのラキオで、(沙明はラキオのすっぴんを知らなかったので)良く見ても正体は分からなかったそうです。
何とか一命を取り留めてメインコンソールに二人で戻って議論に入ると、沙明は強い塩分濃度測定器のビームを感じました。
それはしげみちの塩分濃度測定器のビームでした。なんだ男かよ、とがっかりしながらも沙明が尋ねると、しげみちは異様に怯えた様子でした。
そして言いました。「さっき沙明の背後に……全裸のジョナスが見えて……。」
しげみちの言葉に、隣に居たSQがこう言います。
「んー。過去に振ったジョナスのVRじゃNE?」
茶化された言葉に心当たりは無かったそうです。
けれど沙明には、あの怯えたしげみちの姿が冗談だとは思えませんでした。
「沙明。」
いつの間にか横にいた夕里子の言葉に、沙明の身体が跳ねました。
彼女は沙明の後ろを一瞥してフ、と笑います。
「な、なんだよ」と聞けば、夕里子は「気に入られたようですね」と不気味に言いました。
議論中も沙明は心ここにあらずといった様子で、先ほどのことを考えています。
沙明は幽霊の類を信じていませんでした。
そして次第に腹が立ってきました。議論が終わる頃には、あの風呂上がりのラキオの正体を明かして安心したいという気持ちでいっぱいになっていました。
夜時間に、沙明は下層へ行きました。確か、あの風呂上がりのラキオがいたのは格納庫のあたりだったはずだ、と向かいます。
格納庫の中には誰も居ませんでした。ここにはジョナスとククルシカ以外は近寄りません。
何故か普段ロックされているはずの戸が解放されていました。
「キンタマキラキラ金曜日」、ぞくりと背中を寒いものが走ります。それはジョナスの声でした。
小さく掠れている声。沙明は足が震えるのを感じました。
戻ろうか、と思うのに引き返そうとしても足が動きません。
吸い寄せられるように奥へ進むと、そこには無数の鏡餅が積み重なっていました。
無意識に沙明はある鏡餅の前に歩み寄っていました。
何の変哲もない、他の鏡餅との違いも無いはずのそれ。
唾を飲んで、沙明はそれを鏡開きしました。
そこには……変顔の、オトメの姿がありました。
***
目が覚めると、そこは医務室でした。
身を起こすと、傍らにはククルシカが座っていました。
どうやら気絶したところをククルシカとLeViが運んだようです。
先程あったことをククルシカに伝えようとしたところ、唇にきりたんぽをあてられました。
(さっき見たことは内緒だよ。)
そう示唆して微笑むククルシカの笑顔に、沙明はゾッとして、それ以上何も言えなくなったそうです。
完