OPEN OR DIEあの日を境に、いつも、視界がもやもやと煙っている。
落ちた左手首の先を、未だ探し続けていた。
(傷のない顔と、左の手のひら、それと……)
あの時、無くしたものは、
(それと、なんだったっけ)
自分だけが、ステージの上に取り残されたような感覚。
ステージの上にいるのなら、踊り続けなければならないというこの強迫観念はなんだ。
(一体、何に、)
その青い海に、何かを求めた事があったような気がするが、どうしても思い出せない。
ウミネコの鳴き声を遠くの方に聞いて、そのハチミツ色の瞳がゆっくりと開いた。
(何に、なりたかったんだっけ)
その時、降って湧いたような唐突さで、港に雑然と積まれた木箱に腰掛ける眼前へ現れたのは、先の尖った革靴。
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