Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🐍 ⚽ 👏
    POIPOI 81

    きみどり

    ☆quiet follow

    オフ回の時の凪玲(まだ付き合ってはいない)。
    凪→玲王に向けた感情をこねこねする話。キリのいいところまでで一旦投稿。

    ##凪玲

    未完成感情パズル「…………勝った」
    「勝ったな! 凪!」
     差し出された手を握り、引き起こされる。顔を上げれば、そこには嬉しさと感動で堪えきれずに涙を溢れさせ、汗とか涙とかで顔面がめちゃくちゃになった玲王が居た。
     その顔はサッカーを始めた頃の、ゴールをひとつ決める度に、キラキラと目を光らせて喜んで駆け寄ってきた時の玲王と同じ顔だ、と割れんばかりの歓声に包まれながら、俺は思い出を掘り起こしていた。

    ***

     あの熱狂渦巻く試合から数日経ち、『青い監獄』に招集されていた選手達に二週間の休暇が与えられた。
     帰宅早々、自室のベッドに寝転ぶと瞼が途端に重くなる。そのままゆるゆると目を閉じ、『青い監獄』の中で受けた刺激を、興奮を、あの熱さを思い出しながら、二週間何して過ごそう、と並行して思考する。
     元々そこまで学校での交友関係は広くない。両親も「せっかく帰って来たんだから家族揃って出掛けよう」なんて言う訳も無く、今まで通り放任してくれていて、変わらない環境のありがたさを噛み締めた。
     夕飯ができたと声を掛けられ、思考を中断する。あれこれ考えるのは、腹ごしらえをしてからでも遅くない。それに、唯一学校が同じ玲王がいる。
    「お?」
     ピロン、とスマホの通知音が鳴り、メッセージアプリを開く。
    『凪、明日ヒマ?』
     簡潔な誘い文句の送り主は、潔世一。そういえば、解散する前に連絡先交換したっけ。誰が居るのか聞こうと文字を入力し始めると、更に追加でメッセージが送られてくる。
    『とりあえず、俺と蜂楽。あと千切がそれぞれ声掛けてる』
     挙げられた名前を見て、知らない相手でもないし、それならいいかな、と思いながらOKのスタンプを返す。
    「ねぇ、母さん。明日、サッカーの友達と遊んでくるから、晩御飯いらなーい」
     友達、トモダチ、ともだち……口にして、何だか変な感じだ。言い慣れない単語だからか、口がもぞもぞする。『青い監獄』でチームを組んで一緒に切磋琢磨した潔達を友達と呼ぶのであれば、凛も友達、馬狼も友達、斬鉄も友達……じゃあ、玲王は?
     友達の玲王……指先にできた、ほんの僅かなささくれみたいな引っ掛かりを感じる。
     部屋に戻れば、潔から明日の待ち合わせ場所と時間の連絡が届いていたので了解、とスタンプを返す。メッセージの一覧に戻ると、潔の下には玲王とのメッセージの履歴。懐かしい気持ちで開くと、了解のスタンプの前に『明日、■時に■■駅集合な!』という玲王のメッセージがあった。
     あー、これは『青い監獄』の招集場所に行くのが分からない、めんどくさいって言って、玲王が連れて行ってやるから待ち合わせしようって話してたやつだ。懐かしくて、つい遡ってしまう。
    『明日、放課後な!』
    『来なかっただろー!次は迎えに行くからな』
    『週末の大会、俺たちなら余裕♪』
    『凪のシュート、すげーかっこよかった』
     わぁ、『宝物』って言ってた頃の玲王のテンションだ。懐かしい。キラキラと目ぇ光らせて喜んで駆け寄ってきて、乱暴に肩組んで頭をガシガシ撫でてきて……久しぶりだった。U-20日本代表との試合が終わった後、玲王も俺もお互い酷い顔で、それを見ながゲラゲラと笑いあってた。
     メッセージを最新の場所に戻す。この日から俺達の時が止まってしまっているみたいだった。実際は、連絡なんて取らなくてもいいくらい近くに、隣に居ただけなんだけど。
    「はぁ――――っ」
     ごろんとうつ伏せになり、スマホの画面を睨みつける。『玲王は明日、暇?』『一緒に遊ばない?』『潔と遊ぶんだけど』『あいたい』……メッセージの送信欄に言葉の羅列を打ち込んでは消すを繰り返していると、段々と面倒くさくなってきた。
    「……もういいや。明日考えよ」
     そう決めたのと同時に、お風呂が沸いた事を告げ名前を呼ばれる。のそのそとベッドから立ち上がり、部屋を後にした。

    ***

     潔達との待ち合わせに遅れると連絡をして、画面に向き直る。アーケードゲームはしばらくぶりだが、だいぶ勘も取り戻せてきた。つい夢中になっちゃって連絡するの遅れたけど、まぁセーフだよね。
     連勝記録の数字がひとつ増える度に嬉しくなる。ゴールして、得点を撮った時の様な高揚感。なんか変わったなって自分で思う。
    「おい、そこのゲーム廃人面倒臭王子」
     聞き覚えのある声が、レバーの動きを、ボタンの動きを鈍らせる。そして、急に視界が揺れた。
    「お?」
     頭と首を乱暴に捕まれ、更に揺さぶられる。
    「わ、わ、わ!」
    「おー、おー、見つけた。現行犯逮捕ぉ!」
     聞こえてきた、よく知る声に筐体のレバーとボタンから手を離す。ぴた、と揺さぶりが止まり解放され、揺れが収まった視界が紫を捉える。
    「れ……お?」
    「まーたゲーセン寄ってたのか? 相変わらず好きだなぁ」
    「え、なん、」
    「待ち合わせしてる潔と会った。皆で遊ぼうってなったから、お前を迎えに来たんだよ。凪」

    (き、き、聞いてないんだけど、潔~~~~~!?)

    ***

     潔のグループと玲王のグループが揃ったらそれなりの人数の団体になり、そこそこ目立つ。
     中でもモデルをしているため顔の認知度が高い雪宮、高身長かつ髪型に特徴のある蟻生と俺はよく声を掛けられ呼び止められた。その度に雪宮は自分自身で、乙夜と玲王が後の2人に対してすかさず間に入り、声を掛けてきた一般人(主に乙夜が女子を)鮮やかに軽くあしらってしまう。
    「ナイスアシスト、玲王」
    「うっせー。お前は声掛けてきた女子狙いだろ」
     ケラケラと笑いながらハイタッチをする2人の姿を見て、「俺の知らない玲王が居る」なんて柄にもなく思ってしまった事に、凪自身が1番驚いた。

     ゲームセンターでひとしきり遊んだ後、カラオケに行ってU-20日本代表と会って、ノリと勢いでボウリング対決することになって、ボウリング場に馬狼が居たので、馬狼で遊んだ。
     決着がつかず、ボウリング対決は延長戦に突入する頃、潔は「この後約束があるから」と言って途中で抜けて帰ってしまった。
     白熱したボウリング対決が終われば、自然と解散の流れになり、蜂楽と千切と一緒に繁華街をブラつく。特に目的は無かったので、楽しそうに話しながら前を歩く2人を見ながら、俺は時折手元のスマートフォンに視線を落とす。
     『スタミナが回復しました、クエストに出かけましょう!』『ピックアップ開始!今なら10連無料!』『コラボ開催中!イベントをクリアして限定アイテムをゲットしよう』ポップアップされるのは、どれもこもゲームの通知ばかり。2人とはぐれてしまっても悪いので、あまりやる気にはなれなかった。
    (どうしよ……抜けるタイミング全然分かんない)
     大抵、出かける時は玲王と一緒だった。気が向いた時に行って、疲れたり飽きたら帰る。自由すぎるだろ、と千切に突っ込まれたが、比較対象が無いから何が変なのかも分からない。学校に居ても、ちょっと面倒臭いなというクラスメイトに絡まれた時、うまくあしらってくれたのも玲王だし、サッカーの試合中にチームメイトと諍いが起こりそうな時、いち早く察知してその場を治めたのも玲王だった。
    (うわーーーー。俺、対人スキル未振りすぎ。弱すぎでは?)
     ちょっと弱気になったというか、懐かしさに浸りたいというか、やっぱり玲王と話がしたい。何を、という明確な目的は無かった。メッセージアプリを立ち上げてメッセージを打ち込んだ所で指の動きが鈍くなる。昨日押すことが出来なかった送信ボタン……いや、押すのか? 押せるのか?
    「なぁ〜ぎっチャン♪」
    「俺たち無視して、画面と睨めっこなんていい度胸してんなぁ!」
    「あ」
     画面をタップし、しゅぽん、と気の抜けた音と共にメッセージが送られた。は? 嘘でしょ。
     右から蜂楽、左から千切が覗き込んで来ようとやって来るので、慌ててスマホをポケットにねじ込む。その間もぎゅうぎゅうと俺をサンドイッチの様に挟んでくる2人に、とうとう「わかった! わかったから! 降参!」と叫んでしまった。

    ***

    「……で、なんだコレは」
    「俺のお見送りデス…………」
     メッセージを受け取り、待ち合わせの駅に来た玲王を迎えたのは、蜂楽と千切に挟まれて肩身を狭そうにしている凪だった。
     玲王に凪を無事引き渡せたから、俺達は満足したわ〜!と言いながら、蜂楽と千切は手を振り去っていった。
    「……本当に何だったんだ?」
     それは俺も聞きたい。あと、コミュ強こわい。

     切符を買って、改札をくぐり、ホームに並んで電車を待つ。2駅か3駅くらいで乗り換えて、そこで玲王とはお別れ。

    『一緒に帰りたい』

     送ったメッセージに、すぐ既読が付いた。返事を見られたくなくて(半分は断られるメッセージなんて見たくないと思って)ポケットにねじ込んだスマホが震え、玲王からの着信と気付くまで結構な時間を要し、震える指で通話ボタンをタップした。
    『凪? 俺、10分くらいで駅着くから、分かりやすいとこで待ってろ』
    「れ、」
    『うん?』
    「れお、だ」
    『おう。御影玲王さまだぞー』
     一瞬、声が震えそうになって、ぐっと唇を引き結ぶ。もっと話したい気持ちもあるが、これ以上口を開くと、目の前でめちゃくちゃいい笑顔をしている蜂楽と千切が何するか分かったもんじゃない。
    「分かりやすいとこで、待ってる。うん、うん」


     そして、やって来た玲王の第一声に話が繋がる。そんな事を思い出していたら、もう1駅過ぎてしまった。別れの時間まで、あと2駅。
    「なぁ、何で俺呼んだの?」
    「……えっ」
    「蜂楽も千切も、嫌いとか苦手とかじゃないだろ」
    「確かにそうだけど」
     窓の外を見ようと視線を上げれば、車内の明るさで鏡のようになった窓に、並んで座る俺と玲王が映る。
    「そう、なんだけど……。玲王と、話したいなって思った」
    「その割には、だんまりだけどな」
    「ゔっ……。それ、は」
    「まぁ、俺が何でもかんでも喋ってたツケだと思っとく。勝手に、凪の事を代弁できてるって舞い上がってた、俺の」
     そんな事ない、と口を開こうとするとタイミングが良いのか悪いのか、駅に着くアナウンスが流れる。

     感情の整理がつかない。俺は、玲王とどうなりたい?
     分からない……。いくらかき集めても、真ん中に当たるピースが見つからない。


     別れの時間まで、あと1駅。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💜💜💜💜💖💖👍👍🙏🇱🇴🇻🇪❤❤❤💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works