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    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

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    きみどり

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    「未完成感情パズル」の続き。昔に戻りたいって言う凪と、未来をちゃんと見とけよって叱る玲王の話。進捗晒し。

    ##凪玲

    さよならインプリンティング(凪玲) 揺れる車両の中、見つけたピースをぽっかり空いたパズルの真ん中にぱちりと嵌めてみる。

    「俺は……。あの時みたいに、玲王と普通に喋って、笑って、そんな風に戻れたら、なんて」

     時計の針は、巻き戻せない。
     けど、俺達の関係は……まだ巻き戻せるかも。なんて、淡い期待。
     手を伸ばしてもギリギリで届かない、そんな歯痒い距離は嫌だ。振り向けばそこに玲王が居て、手を伸ばせば捕まえることができる。そんな距離に居て欲しい。
     繋ぎたくて伸ばした俺の手は、呆気なく玲王に捕まれてしまう。眉間に皺が寄って……怒ってる?
    「過去は過去。今を……前を見ろよ、凪」
    「……え?」
    「俺の言った事、忘れんな。ばーか」
     俺の手を離し、玲王は座席から立ち上がって駅のホームに降りてしまう。えっ、玲王の乗り換えの駅ここじゃない。降りるの、俺の方!
     慌てて俺が立ち上がるのと、車両の扉が閉まるのは同時だった。
    「な、に……えっ、?」
     何か、玲王の機嫌を損ねるような事を言っただろうか?分からない。素直な気持ちを吐き出したつもりが、また、俺の知らない所で玲王を傷付けてしまってた?
     扉の前で立ち尽くしていると、スマートフォンが震える。玲王からのメッセージだ。
    『次の駅で降りて、電話』
    『しろ』
     命令形でメッセージを送ってきている癖に、一緒に添えられたスタンプは「ごめん」と謝罪している。
     わからない。玲王がわからないよ……。深く溜息をついて、座席に腰を下ろす。さっきまであっという間に過ぎていた1駅の時間が、果てしなく長く感じた。
    どうしよう、何を話そう、どう切り出そう、嫌なことばかり膨らんでいって、もういっそこのまま夜の闇にとけて消えてしまえば、こんなにも悩まずに済むのに。

    (あー、でも白いから目立つよなぁ……)

    ***

     長い長い1駅の時間に終わりを告げるように、次の停車駅のアナウンスが車内に響き渡る。スマートフォンを握りしめ、車両の扉が開くのと同時に飛び出し、そのまま通話ボタンを押す。
    何を話すかなんてまとまっていないけれど、玲王の気が変わらないうちに、早く、早く、繋がれ……!何度目かの呼出音の後、ぷつ、とそれが消える。
    「……ッ、れ、おっ!」
    『…………こっちが繋がってるかどうか、確認もせず第一声が俺の名前って、凪、おまえ……ふはっ、はは!』
    「いや、その……笑い事、じゃ……ないから」
     人気のほとんど無い薄暗い駅のホームに申し訳程度に備えてあるベンチに腰を下ろし、深呼吸する。良かった、いつもの玲王だ。
    『まぁ、笑い事じゃないか』
     笑っていた玲王の声が、スピーカー越しでも分かるくらい、落ち着いた冷ややかなものに変わった。首筋を伝って落ちる、嫌な汗に思わず身震いする。
    『とりあえず、迎えに行くからそのまま駅で待ってろ。まだ、終電じゃないよな?』
    「う、ん……。まだある」
    『どれくらいかかるかなー。あ、とりあえず俺の電話の要件は、終わったぞ』
    「そうなの?」
    『電車降りて待ってろ』
    「……それだけ?」
    『他に何かあると思った?』
     正直、めちゃめちゃあると思った。だって、何も言わずに玲王は電車降りちゃうし、思い返しても絶対俺が何か言った言葉に怒ってるヤツだと思う。でも……安易な謝罪はそれこそ、玲王を余計に怒らせるだけだし。
    「玲王」
    『何だ、凪?』
     何でも分かってくれているって甘えは、よくない。多分、めんどくさくても、しんどくても、今向き合わなきゃダメ、ってヤツなんだと思う。
    「……前置きするの、かっこ悪いけど。俺、玲王が何で今怒ってるのか……分からない。だから、ゴメン」
     とりあえず、言いたいことは言った。玲王の沈黙が長い。切られたかな、と思って耳から離しても画面は通話中のまま。良かった、まだ繋がってる。
     ねぇ玲王、今どんな顔してる?やっぱり、呆れてるかな。それとも、怒ってる?仕方ないなって苦笑してる顔だったら、いいなぁ。
    『……本当に分からないのか?』
    「うん。教えて」
    『テスト勉強じゃねーんだぞ。何回も言わないから、よーく聞いとけ。あ、ちょっと待って、切るぞ』
    「えっ、ちょ……え、玲王!?」
     無情にも通話は一方的に切れてしまう。こっちからかけ直して、出てくれるかな。出て欲しい。まだ、玲王の声を聞いていたい。迷いなく、発信履歴からもう一度電話をかける。
     呼び出し音が鳴り響く。段々とその音が大きくなって、近付いて、近くに……
    「あっ」
     音のする方へと顔を向ければ、バツの悪そうな顔をした玲王が、けたたましく着信音を鳴らすスマートフォン片手に立っていた。
    「あー、くそ。やっぱ、バレるよなぁ……」
    「駅に着いてたんだ」
    「そ。ちょっと驚かせてやろうと思ったんだけどな」
    「実はじゅうぶん驚いてたりする」
    「……表情筋、もっと動かせ」
     玲王の手が伸びてきて、ふに、と俺の左頬をつまむ。痛みを感じないよう、絶妙な優しさで。しばらく俺の頬をふにふにと遊んだ後、玲王は隣に腰を下ろす。紫の瞳はまっすぐ空を見ていて、その横顔を俺は見ていた。
    「さっきの質問の答えだけどさ」
    「ん?」
    「別に、怒ってるつもりは無かった。俺の方こそ、悪かった」
     けど、と玲王の視線は空から自分の足元へと移り、そしてゆっくり俺の方へ向く。
    「忘れてんのは良くない。それには腹を立ててる」
    「やっぱり怒ってるじゃん」
    「だって凪が……昔の頃に戻りたいって、言うから」
     唇を尖らせ、不満そうな表情を浮かべる玲王は何だか少し新鮮だ。いつもより、色んな表情を見れている気がして、ほんの少しだけ得した気分になる。
    「で、思い出さねーの? ヒントいるか?」
     ヒントをくれた所で、思い出す事ができるのかな、俺。

    ※まだ続く。
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