プリキュア5×キャッシュ反金持ちの気風が強まり、パトロールはおろか、ヘリで通勤することも難しくなったキャッシュ。そんな彼は今日も今日とて警察署の裏口から出て退勤しようとしていた。
「はぁ…今日も目立たないとこでじいや呼ぶか…。いつまで続くんだろうな、この状況…」
そのとき、突然キャッシュの背後に1人の男がキャッシュの口を布で塞いだ。
「!?」
キャッシュの口を塞ぎ、誘拐したのは糸目とスーツ姿が特徴の男、カワリーノだった。
「残念ですが、もう二度と帰れませんよ……。」
(反金持ちの人間か…!?それとも…)
ここでキャッシュの記憶は閉ざされた。
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気がつくとキャッシュは大雨の中、色とりどりの街灯が光る夜の繁華街の道路前で倒れていた。
(あれ……?オレ、確か誰かに誘拐された気が…。なんで繁華街で倒れてたんだろう…?)
周囲には自分以外、誰もいない。マルメンもフランも、ヤマトもバカラも警部もレギルの姿もない。
「スマホは…繁華街なのに圏外!?一体何がどうなってんだ……!?」
そこへ、雨音の中でもコツコツとコンクリートの横断歩道を踏みしめながら近づく足音が聞こえた。
「うわ〜、やつれてるしずぶ濡れじゃ〜ん。」
キャッシュが声の方を振り向くと、そこには黒ラインが入った黄色のパーカーとキャップ、チェーンのネックレスと腰飾りを身に着けた不良時代の自分が倒れてるキャッシュを見下していた。
「……!!!お、おい!未成年が夜の繁華街で出歩いたら危ないだろ!?家に帰」
警官らしく未成年であるもう1人の自分に帰宅するように説得するが、
「ねーねー警官さん、オレといっしょに遊びに行こうよ!ボウリングとかカラオケとか〜」
不良キャッシュは警官キャッシュの叱咤を遮るように遊びに行くことを誘った。
「え?遊び?何言ってんだ!?早く家に帰るんだ!それにオレも早く戻らねぇと…」
負けじと不良キャッシュに帰るよう叱咤する警官キャッシュ。しかしその瞬間、
「本当は戻りたくないんだろ?」
不良キャッシュから笑顔が消え、能面のような生気がない顔が出た。
「!?」
「大門の遺志を継いで自分のやり方であいつの正義を貫き通す為に警官になったのに、市民のみんなから汚職警官とか悪人とか好き放題言われて可哀想。警官辞めたいな、こんなことになるなら警官なんかならないでテロ組織になればよかったって思ってるでしょ?」
「そんなこと…な…い…」
「ここなら警官さんの思い通りだよ!嫌なことや警官の仕事、何もかも忘れて、オレと遊ぼう!」
ここで笑顔を見せる不良キャッシュ。だが、彼の目は虚ろで、不気味な雰囲気がはっきり見えていた。
「あ、あぁ……!」
また警官キャッシュの記憶が掻き消された。
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翌日、キャッシュのじいやがキャッシュが帰って来ないことに即座に気付き、警察に捜索願いを提出した。情報屋バカラの協力により、キャッシュはナイトメア社の本部に囚われたことが発覚した。勿論全員そこへ突入した。
「ここがナイトメア社なのね……!」
「不気味極まりないじゃん……!」
「みなさん、突入します!!!」
「みんな、マルメン達とはぐれないでよん!!」
こうして、警察本部全員はエレベーターやエスカレーター等を駆使し、ナイトメア社の会議室へ突入した。
会議室のドアをバン!!!と豪快に叩き壊して突入する警察官。
「動くな!ドンヨーク警察だ!」
「ここに誘拐された被害者がいるという情報を聞いたわよ!」
マルメンとフランの怒声を聞き、カワリーノが駆けつけた。
「おやおや警察官の皆さん、一体何用で?」
「キャッシュを返して貰おうか……?」
「あぁ、キャッシュって、赤髪の男のことですかね?」
カワリーノの言葉通りキャッシュが現れた。だがしかし、マルメン達の前に現れたのは、涙のような赤い線が入った白い仮面に覆われた変わり果てた姿のキャッシュだった……
「キャッシュ……さん……!?」
「大丈夫だよん!こんな仮面ぶっ壊せば」
「無駄ですよ。それは絶望の仮面。着けたら最後、二度と外せない仮面です。」
「そんな……キャッシュの兄貴……」
反金持ちの気風に、絶望の仮面に侵されたキャッシュはもう二度と元に戻ることはできないと悟った警察官達はただ、目の前の絶望的な状況を受け入れるしか術はなかった……。