飴を口に含んだ兄が眉をひそめたのを見て、ああ、好みの味じゃなかったんだなと悟る。そうとなれば次の行動は決まっている。良いところだったんだがと思いながら、読んでいた本に栞を挟んだ。
「宮田さーん」
ほらやっぱり。間延びした声にはいはいと相槌を打ち、近寄ってきた片割れに応えて立ち上がる。
慣れた手つきで右手を頬に添えられ、鏡を見つめるように同じ顔が眼前に迫る。俺は少しだけ目を伏せた。この人に委ねようとしているわけではなく、癖みたいなものだ。
逆に牧野さんは眠るように目を閉じるので、彼の顎を固定して俺から動く。
受け手側がリードするのはおかしくないだろうか、と疑問に思いながらも、「そういうものだ」と受け入れている俺も既に絆されているのだろう。
1741