きゃんきゃん、わふわふ、楽しげなガルクの鳴き声を聞いて、イオリは複雑な顔で、むう、と唸った。オトモ広場を預かる者として、ガルクが楽しそうにしているのは、喜ばしいことのはずだ。それが恋人のオトモガルクなら、尚のこと。
イオリの目の前には、しばらく広場に預けられていたガルクが、迎えに来た主人に飛びかかり、じゃれついている姿。久々に会えた主人に思う存分甘え、主人もまたそれに応じて、笑いながらよしよしと撫でてやっている。微笑ましいはずのその光景が、どうにも羨ましくてたまらない。
ボクだって、久しぶりに会ったハンターさんに、あんな風に抱きついて、いっぱいなでなでしてもらって、いっぱい口付けしたいのに――!
一応、里の皆には二人の関係は秘密にしている。ロンディーネもおり、いつ誰が来るとも知れないところで、会えなかった寂しさをぶつける訳にはいかない。
「はは、もう、甘えん坊だなあ、お前は……」
ガルクがハンターの顔をぺろぺろ舐めている。その赤い舌が、ハンターの唇を掠めたのを、イオリは見逃さなかった。そんな、ボクよりも先にハンターさんと口付けちゃうなんて……! しかも、ハンターにはそれを咎める様子もない。このガルクは、ハンターが仕事を始めた時からずっと一緒で、右腕と言って良いくらいの存在だ。ハンターも信頼しきっている。イオリだって、このガルクが悪気があってやっていることではないことくらいはわかる。わかるのだけれども。
「イオリ」
「ふえっ、な、何? ハンターさん」
「ありがとうな、こいつの面倒、見てくれて」
「あ……うん、とっても良い子にしてたよ」
「そうかそうか、偉かったなあ」
今はちょっと……悪い子かも知れないけど、と言いたいのをぐっと堪えて、イオリはじゃれ合うハンターとガルクを横目に、側で不思議そうな顔をしているガルクの顔を、そっと撫でてやったのだった。
その夜。一週間ぶりに狩りから戻ったハンターの家の囲炉裏端で、イオリはハンターの上に伸し掛かり、ちゅっ、ちゅっ、と、その頬に唇を落としていた。まるで、昼間、ハンターのガルクがそうしていたように。当のガルクは、寝所で丸くなって、相棒のアイルーと共にすやすやと寝息を立てている。
「イオリ、寂しかったか?」
「うん……」
よしよし、とハンターの大きな手で撫でられて、イオリは気持ち良さそうに目を閉じる。まるでガルクみたいだな、と、ハンターが思っていることなど、イオリは知らない。
「昼間、焼きもち焼いてただろ、ガルクに」
「う……バレてたの」
「そりゃあ……不満そうな顔してたから」
じゃあ、どうして、と言いたげなイオリに向けて、ハンターはふっと微笑むと、イオリを抱き寄せて、その唇を優しく塞いでしまった。
「んっ……」
塞がれた唇が、そっと離れて、今度は深く口付けられる。ぬっと侵入しようとする舌を受け入れようと、イオリは軽く口を開いた。挿し込まれた舌が、たちまちイオリの舌を絡め取り、くすぐるように撫でてくる。とろけるような口付けだった。二人の唾液と舌が絡み合って、頭がぼうっとしてくる。
抱きしめられた腕に、ぐっと力が籠もる。イオリもハンターの頬に手を寄せて、もっと深く、とねだった。
ああ、そうか。こんな口付けをハンターさんと出来るのは、ボクだけなんだ――。
そう思うと、イオリの体はカッと熱くなり、布越しではなく、直接肌を合わせたくてたまらなくなってくる。股間はすでに大きく硬くなり、それを押し当てられたハンターの腹の奥を、ずぐりと疼かせていた。
「ハンターさん……ボク……」
長い口付けを終え、イオリは切なげにハンターの名を呼ぶ。
「……こんな風に口付けるの、イオリだけだから……許してやってくれるか?」
「うん……仕方ないから、許してあげるよ。だから……ね?」
あの子たちを起こさないようにするから、ハンターさんの中に、入りたい……。そう潤んだ瞳で告げられて、ハンターはこくりと頷いた。
「俺も……イオリのが、欲しい……しばらく会えなくて、寂しかった……」
寂しかったのは自分だけではないと知って、イオリの心はどきりと跳ねた。
「嬉しい……今日はいっぱい、ハンターさんのこと、可愛がってあげなきゃね……」
イオリはそう言って、今度は自分から、ハンターの唇を塞いだ。逃げられないくらい、深く。ハンターはたっぷりとイオリの唇と舌の温かさを楽しみながら、離さないようにぎゅっと、イオリの体を抱きしめた。
おしまい