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    merino

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    merino

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    昔の

    ##文章

    おおかみと、うさぎある寒い冬の日。

    1匹のおおかみが歩いていました。
    群れからはぐれてしまい、エサも捕れずにフラフラとただ当ても無くさまよい続けていました。

    風がだんだんと強くなり、吹雪く雪で目の前は真っ白になってしまいます。
    おおかみは身を隠せる洞穴へなんとか辿り着くと、身を潜めてじっとうずくまりました。

    おおかみはお腹が空いてどうしようもありませんでした。
    吹雪のせいで身体は芯から冷えて、今にも死んでしまいそうでした。
    おおかみはもうダメかもしれないと、ゆっくりと目を閉じました。

    家族や仲間のことを思い出します。今まで食べたご飯のことも思い出します。
    喧嘩をしたことも多かったし、うまく狩が成功しない日もたくさんありました。
    それでも楽しかった日々でした。
    色々と思い出しているうちにだんだんと眠くなってきて、おおかみはそのまま眠ってしまいました。

    目が覚めると吹雪はやんでいるようでした。
    差し込む太陽の光は眩しく、おおかみの目に突き刺さります。

    思わず目を瞑ってじっとしていると、おなかの辺りが妙に暖かいことに気がつきます。
    不思議に思いそっと目を開けてお腹のほうを見てみました。
    そこには真っ白なうさぎがおおかみに寄り添って眠っていました。

    驚いて飛び起きそうになりますが、おおかみはそれをグッと我慢してうさぎの様子をよく見てみました。
    真っ白でふわふわしていて、そしてまんまるのうさぎでした。
    途端にお腹が空いていることを思い出して、思わずごくりとつばが喉を通ります。

    ゆっくりと前脚でうさぎを触ろうとするとうさぎは目を覚ましました。
    それからおおかみのことを見て逃げるわけでもなく「おはよう」と声をかけるのでした。

    おおかみは驚きました。
    それからハッとして慌ててうさぎを捕まえようと立ち上がります。
    それでもうさぎは逃げもせずに、「身体は暖まりましたか?」とおおかみに尋ねます。


    その言葉におおかみは、何故うさぎが逃げようとしないのか、その言葉の意味はどういうことなのかわからず
    混乱して動きを止めてしまいます。
    その様子を見たうさぎは、昨日の晩に自分の暮らしていた穴倉におおかみが迷い込んできて、
    自分を食べるわけでもなくそのまま眠ってしまった姿をみて放っておけなかったのだと説明しました。

    おおかみは悩みました。
    今とてもお腹が空いていて、このままご飯を食べなければ自分は死んでしまう。
    だけれども、自分のことを恐れず、逃げ指出さないで助けてくれたこのうさぎを食べてしまってもいいのだろうか、と。

    次にいつご飯にありつけるかもわかりません。
    普通なら迷わずに食べてしまうのでしょうが、おおかみはそっと座り顔を伏せました。
    このうさぎを食べないことにしたのです。
    おおかみは歩き続ける体力もなく、その洞穴に居続けました。
    たまにご飯を探しに出てみますが、なかなかご飯にありつけません。

    洞穴に戻れば、そこにはうさぎがいました。
    うさぎは逃げることも無く、おおかみのそばに居続けました。

    そんな日が何日も続きました。

    おおかみはもう動くこともできずにいました。
    そんなおおかみを見て、うさぎは言いました。

    私は蓄えたご飯でここまで長らえましたが、この先はそんなに長く生きることはできません。
    私はあなたにご飯を与えることもできません。
    短い間でしたが一緒にいられて楽しかった。

    どうぞ、私を食べてください。

    おおかみは驚いて顔を上げてうさぎのほうを見ましたが、そのまま顔を伏せて目を閉じました。
    お腹が空いて朦朧としていましたが、うさぎを食べることはしませんでした。

    うさぎがおおかみの顔のそばまでやってきます。
    頬の辺りに暖かいものを感じながら、おおかみの意識はだんだんと遠くなって行きました。



    次に目が覚めるとうさぎの姿は見当たりません。
    どこかに行ってしまったかと一瞬思いましたが、自分の身体に何か違和感があるような気がしました。

    おおかみは気がつきます。
    自分の口の周りにべったりと血がついてることを。

    よく見れば白い毛がたくさん落ちていることにも気がつきます。


    おおかみはいつの間にかうさぎを食べてしまったのだと理解しました。

    おおかみは泣きました。
    わんわん泣いて、洞穴から外へと歩き出すのでした。
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