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    炊飯釜のおこげ

    主にTRPGの立ち絵、落書きとか置いてます。(@suihan_gama

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    炊飯釜のおこげ

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    ゾスク通過後の🐔のSSっぽい何か。プチ家出を計画してた頃の🐔と兄の話。

    【「Bueno.」「De parte de quién」】🐔


    『実家に帰る』


    ……だなんて、何を考えてるんだろうとも思った。実家に帰らせていただきますだなんて台詞、まだ早すぎない?
    だけど、そうでもしないといつまでも僕達は平行線のままなんじゃないかって。……いつまでだって待てるけれど、動くなら僕だ、と。
    判断が早すぎるって怒られるだろうか。
    ああでも僕の才能は<考える>才能だったなと、こめかみに人差し指を当てた。

    そんな思考に至る僕を許してくれる?と隣に居てくれるであろう見えない『ともだち』に話しかけながら、荷造りを進めていた。
    プチ家出をするかもしれない話を、誰にも告げないまま。
    出て行くとなったら、その前の晩に澪と霧耶にはちゃんと話しておこう。居場所のメモと連絡先も渡して。

    ……まあ本当に実家に帰ってしまったら、此処には帰って来れない。それは困る。
    元々、そんなつもりは一ミリもなかった。

    家出先に宛があった。
    実家から離れて一人で暮らしている兄、テスカ。
    匿ってくれる……と言ったら聞こえはあんまり良くないけれど、恐らく僕が会いに行って数日居座ったとしても実家に連絡する、なんてしない人だ。
    数多くいたらしい兄姉弟妹も、今は兄さんと僕の二人だけ。それもあってか、可愛がってくれていたし、大切にしてくれているのをよく知っている。
    妹のピンチとなればなんでもする人だからな……と自惚れと呼んでいいのか分からない複雑な心境になりながら、スマホを手に、記憶している兄の電話番号を押していく。
    番号が変わってしまったけれど、出てくれるだろうか。


    📱


    『もしもし、どちら様で……』

    「テスカ兄さん」

    『!あれ、まさかその声、チトリか……!?』

    「よかった出てくれて。僕のスマホ、番号変わっちゃったから」

    『無事か?なんか実家から連絡来てたけど。まァ俺もチトリくらいの時ヤンチャしてたしな~~深くは聞かねェよって言いたいとこだけど、』

    『……なんか、あったか?』

    なんでもお見通しなんじゃないかって、そんな声色だった。

    「兄さんのところにお邪魔することになるかも?」
    「今住んでる場所から、ちょっとだけプチ家出しようかな~!って計画しててさ!」

    『あっはっはっは!いいねェ、誰に似たんだか!ま、可愛い妹の頼みとあっちゃあ断れない』
    『勿論、実家には内密にしとく。オレんちは分かんな?』

    「……うん。ありがと、兄さん」

    『そん時はまた連絡くれな~準備しとくわ。……あと、』

    「ん?」

    『………もしこっちに来ることになったその時は、どうして家出に至ったのか。兄さんに"詳しく"、な』


    📱


    頼もしいな。と思う反面、本当に家出することになったらどう話すか考えておかないといけないな、と眉間に手が伸びる。
    そうだった、兄さんは"なんでもする人"だったとスマホの画面を見ながら苦笑した。


    ------- --- -


    そんな通話をしてから数日後のこと。
    ……紆余曲折。色々あったけれど、家出までには至らなかった。寧ろ家出どころか僕の心臓がもたない現状になっているけれど、こっちの話はまた……別の機会に。


    シェアハウスの共有スペースで朝ごはんを食べて、自室へと戻ってきたそのタイミングだった。
    ベッドにそのまま置きっぱなしだったスマホの着信音が鳴り響く。
    もしや、と思って駆け寄れば、画面には「テスカ」と表示されている。虫の知らせとも言うのかもしれない、昔からそういう"勘"が働く人だったもんなあと思いながら通話ボタンを押す。


    📱


    『もしもーし、おっ、やっぱタイミングばっちりだったか』

    「今ちょうど部屋に戻ってきたところ。僕の行動、兄さんに全部お見通しなんじゃない?」

    『まァ恩恵は少なからず俺も受けてるし、お前ほどじゃあないが多少はな。勘が働く時は働くらしい』
    『うん、声色聞いて確信した。心配要らずだったな、大丈夫そうだ』

    「……兄さん?」

    『よかったなァ、チトリ』
    『手離しがたいもんが出来て。大事にされて、大事にしろよ』

    「………………」
    「うん、………兄、さん、……っ」

    『あーーもう、泣くな、泣くなって』
    『……まァ、あいつらと痴話喧嘩するようなことがあったらいつでもオレんところに駆け込んで来い。お兄ちゃんが抱き留めてやるからな~』

    「……ははっ、もし次に家出するってなったら今度こそ正真正銘の実家(身内の家)に帰らせていただきます!になるかもね?」

    『そん時ァ、妹はやらん!って言った方がいいか?なんてな』

    「兄さん」

    『んー?』

    「ありがと」

    『ん。可愛い弟妹から頼られると嬉しくなる生き物だからなァ、"兄"って奴は』
    『どっかの"お兄ちゃん"も今頃そわそわしてそうな気もすんだけど。アッチは連絡取れてんだか』

    「……?」

    『あーー……いや、こっちの話。そういや時間、大丈夫か?』

    コンコン、と自室の扉を叩く控えめなノックが聞こえてくる。
    聞こえてきたのは澪の声だった。
    朝食の後、支度を終えたら一緒に買い物に行こうと約束をしていたのを思い出す。

    「あっ!そうだった!これから出かける予定が……あって……!」
    「澪ーー!今行くからちょっとだけ待ってて!」

    扉の向こうから「ふふ、ゆっくりで大丈夫だよ」と、柔らかい声音が返ってくる。
    ゆっくりで……と言われたものの、澪とのお出かけなのだ。一分一秒無駄に出来ないと、スマホを片手に大急ぎで支度をし始める。

    『おっいいねェ、友達とお出かけDAYだったか。楽しんできな~』

    「というわけだから兄さんごめん!また改めて!連絡するから!」

    『あァ、またな』

    「うん、またね」

    『お前の大切な仲間、友人達との日常バナシも、惚気バナシも、楽しみにしてるなァ?』

    「えっ、待っ……ちょっ……兄さん!?」


    📱


    ツー、ツー、……と通話終了の音が響く。

    「みんなとの日常話も惚気話も、もう既に数えきれないくらいあるんだけどな……何回電話したらいいんだろう」

    温かで楽しそうな声色だった兄さんにつられてか、自然と笑みがこぼれてしまった。




    「Bueno.」(もしもし)
    「De parte de quién」(どちらさま?)
    🐔緧鷲見 チトリ / 緧鷲見 テスカ
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