ほんのりとレトディミかもしれないしそうでもない隣の客が立ち上がる音で、ようやくスクリーンの外側にいる自分に気がついた。エンドロールももう終わり、館内が次第に明るくなり始めていた。あれほど場内を埋めていた観客はもうほとんど、出入り口の通路に詰めかけている。息をゆっくりと、吐いた。カシミヤのニット越しに、建国当時のファーガスの冷気と、民衆の歓声がびりびりと肌に残っていた。ファーガス統一王国史は王国歴500年となった今でも、とりわけ人気のある題材であり、これまでも何度か目にしたことがあった。しかし、今回の作は歴史家が監修に大きく携わったためか、はたまた監督が良かったのか、史実的にも、いち映画としても高く評価されているのだとは聞いていた。けれど、想像以上だった、と思う。少なくとも、もう人気もない映画館で、まだぼんやりと余韻を噛み締めているくらいには。
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