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拝啓、愛しい人。どうしていますか__
そんな始まりで手紙を書いたことがある。確か小学生か中学生か、そのくらいの時に。
国語の授業で手紙の書き方を習ったのをきっかけに、一時期畏まった手紙を出すのが流行ったのだ。
太嗣ちゃんも書いてみれば?とクラスメイトに言われるがまま鉛筆を握り、私も手紙を書いた。詳しい内容は覚えていない。ただ、手紙の書き出しが自分では思いつかないようなものだったから、よく覚えているのだ。
クラスメイトに見守られながら書き上げた手紙は、その後すぐに幼馴染の下駄箱へ投函した。
下校時間には手紙の事も忘れ、幼馴染といつも通り一緒に帰った。
その数日後のことだ。朝学校に着くと、下駄箱に一通の手紙が入っていた。自分が手紙を出したことはその日のうちに忘れていたので、本気で驚いた。そして、とても嬉しかった。一緒に登校してきた幼馴染をほっぽって、両手で手紙を持ち、大喜びで教室へ向かった。着いたらすぐに通学カバンを片付け、1時限目の授業の準備もして、準備万端で封を切った。
内容はというと、やはりこちらも覚えていない。仕舞ってある場所は分かっているので、いつでも読み返すことは出来る。しかし、何故か読み返そうという気にならないのだ。そのときの手紙はまだ大切にしまってある。
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太嗣のお話は
「拝啓、愛しい人。どうしていますか」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わります。
こんなお話いかがですか
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