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    mogumogukbkb

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    mogumogukbkb

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    女女の🐉🔥です。ロングの🔥さんがショートヘアにする話です。

    #love



     カブさんが髪を切ると聞いて、ちょっとだけ泣いちゃった。そのくらい、彼女の長い髪が好きだった。きっと本人以上に愛着があったと思う。だって、風に靡く髪を一纏めにしてスタジアムで戦うカブさんはカッコいいし、その結んだ髪を解いてアタシに覆い被さった時、毛先がアタシの顔に触れると、まるで天蓋に覆われているようで、最高に幸せだった。それなのに! 切ってしまうだなんて! うわーん!!
     だからヘアサロンに行く前夜はたっぷりと時間をかけてカブさんの長髪にお別れをしたんだ。毛先に至るまで注がれるキスの雨にもどかしそうにしてたけど、カブさんは、アタシの気の済むまでじっとしてくれていた。
     苦笑気味に、「軽い気持ちで切るつもりが、こんなに惜しまれるとは思わなかった」ぼくの髪を好いてくれてありがとうね、そう言ってアタシの髪を指先で優しく梳いてくれる。それに機嫌を良くしたアタシは、翌日のデートそっちのけで結局明け方近くまでカブさんとエッチしちゃったのだった。お陰でホテルロンドロゼで頂くはずだったランチを取りやめ、当初の予定よりも大幅に遅れてアタシたちはシュートシティへ向けて出発した。

    「とてもお洒落な雰囲気だね」
    「あの二人が推すだけあるね〜」
     白を基調とした外観の建物を二人して眺める。ロトムのナビの下、アタシとカブさんはルリナとソニアに教えてもらったヘアサロンへ、何とか予約の時刻までに到着することが出来た。吊るされたドアプレートには『CLOSED』の文字。だけど気にせずドアを開く。本当は定休日だけど、常連のルリナの仲立ちもあり特別にお店を開けてもらえることになっていた。
    「ごめんください」
     レジカウンターの上で毛繕いをしていたクスネがアタシたちを認め、一声鳴く。「はあい」と奥の方から声がすると、すぐに店主がやって来た。人好きのする笑顔を浮かべ、指先までしっかりと揃えた手で指し示す。「ルリナとソニアから『最高に可愛くしてあげてね』とお願いされていますよ。お荷物をお預かりしますね、お連れ様はこちらへどうぞ」
     カブさんがシャンプー台で髪を洗われている間、アタシは案内されたスタイリングチェアに座りカブさんの若かりし頃の画像をググっていた。この頃の長さまで切るつもりらしい。……意外と、いや、かなりいいかも……現金な自分自身の感想には目を瞑っておく。
     シャンプーが終わり、頭にタオルをターバンのように巻いたカブさんがアタシのいる真横のスタイリングチェアに座る。カブさんがカットクロスを被った後、彼女の背に立つ店主の女性とヘアスタイルについていくつか話し、店主の方が何回か頷くと、タオルを外し、いよいよカッティングに取り掛かった。
     腰まで伸びる彼女のグレイヘアに、いかにも切れ味の良さそうなハサミが入れられ──ちょきん! ああー! ああーッ!
    「キバナちゃん、腹でも裂かれたのかい?」
     先の心の叫びは一切外界に漏れていないはずなのに、アタシの悲鳴を敏感に感じ取ったカブさんが苦笑混じりに声を掛けてくる。なに、愛の力?
     アタシはと言うと、叫んではいなかったものの、悶えるように身を捻らせ、両手で顔を覆い、指の隙間から恐る恐ると言った風にその光景を凝視していた。店主は笑いながらもハサミを動かす手を止めない。流石プロ。
    「! あらあ、まあ、うふふふ」
     店主が愉快そうな声を上げたのが気になったけれど、アタシの思考はカブさんとの会話を優先した。
    「キバナちゃんが最後にショートヘアにしたのっていつ?」
    「うーんと、トレーナー時代にヘアドネーションの為に伸ばしていた髪を切った時が最後だったかな。それ以降はずっとロング」
    「ショートにしたいとは思わない?」
    「今のところは。だけどカブさんの出来栄えを見たら揺らいじゃうかも」
     アタシに柔らかな影を齎してくれた銀色のカーテンたちがタイル張りの床に散らばっても、もう動じなかった。というより、カブさんから目が離せなくなっていた。重いほどあった髪が裁断され、店主の迷いない手捌きは、大理石の中から珠玉の彫刻が生み出される過程を目の当たりにしているかのようだった。
     そして、店内に西日が差し始めた頃、アタシのお姫様は王子様に変身した。
     もみあげはさっぱりとし、清潔感がある。前髪も切られ、尚且つ掻き上げられているから、チャームポイントの眉毛がよく見える。全体的にワックスで緩くまとめられ、自然な空気感が出ていた。
    「どうかな?」
    「か、かわ、かわいいかっこいいかわいいかわいいぃ……」
     アタシの支離滅裂なコメントに、カブさんが顔をくしゃっとさせはにかんだ。これが決定打となった。アタシの死因、尊いのオーバードース。
     いやいや分かっていた! 可愛いに決まってるよ! だってカブさんだもん! カブさんだよ?! どんな髪型でもそりゃさいこうを叩き出すよ! 「すべてのカブさんは最高に通ず」って昔の偉い人も言ってたし!!
     ロトムのカメラ機能を起動させ、へにゃへにゃと笑うカブさんを永遠の存在に昇華すべくシャッターを長押しし猛烈に撮影してると、含み笑いを見せた店主が三面鏡を持ち上げカブさんの後ろ姿を写す。
    「ドラゴンの隠された宝石を見つけたしまったみたい」
     ん? と首を傾げ、三面鏡に映し出されたものに目をやると、恋人の刈り上げられた襟足のすぐ下の皮膚に──昨晩アタシが咲かせた、赤い花たちが見事に散りばめられていたのだった。

     カブさんも鏡越しに確認し、「あ」、という呆けた声を漏らした後、みるみる顔が紅潮していったのは言うまでもない、よね。


     その夜、キバナがポケスタに投稿した画像には、普段よりも倍のいいねが付いたのだった。


    いいね!: hulburygymofficial、他

    hammerlockedragonstorm:🌈🌈🌈💇‍♀️❤️💙💚🔥🔥🧡💛💜🔥🔥🔥🌈🌈🌈

    HAIR BY @hairsalonfeuerdrache
    #hairstyle #pixiecut #longtoshorthair #shorthair #newlook💇‍♀️ #sunset #newhair #makeup #love
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    mogumogukbkb

    DONE女女の🐉🔥です。ロングの🔥さんがショートヘアにする話です。#love



     カブさんが髪を切ると聞いて、ちょっとだけ泣いちゃった。そのくらい、彼女の長い髪が好きだった。きっと本人以上に愛着があったと思う。だって、風に靡く髪を一纏めにしてスタジアムで戦うカブさんはカッコいいし、その結んだ髪を解いてアタシに覆い被さった時、毛先がアタシの顔に触れると、まるで天蓋に覆われているようで、最高に幸せだった。それなのに! 切ってしまうだなんて! うわーん!!
     だからヘアサロンに行く前夜はたっぷりと時間をかけてカブさんの長髪にお別れをしたんだ。毛先に至るまで注がれるキスの雨にもどかしそうにしてたけど、カブさんは、アタシの気の済むまでじっとしてくれていた。
     苦笑気味に、「軽い気持ちで切るつもりが、こんなに惜しまれるとは思わなかった」ぼくの髪を好いてくれてありがとうね、そう言ってアタシの髪を指先で優しく梳いてくれる。それに機嫌を良くしたアタシは、翌日のデートそっちのけで結局明け方近くまでカブさんとエッチしちゃったのだった。お陰でホテルロンドロゼで頂くはずだったランチを取りやめ、当初の予定よりも大幅に遅れてアタシたちはシュートシティへ向けて出発した。

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