叔母上は年上の甥にむすびの糸を使いたい!「秀信、ちょっといい?」
彼女が僕の視界に収まると、自然と笑みがこぼれる。二つに束ねた桜色の髪が軽やかに右へ、左へ。どうやら機嫌がいいらしい。
「ちょうど一息つこうと思っていました、叔母上もいかがですか?」
その言葉は嘘ではない。早朝から早駆けの知らせが来るなり話を聞き、ちょっとした軍議を開き、その後は文を書き、考えを書にまとめ、気づけは腹の虫が鳴いていた。腹の皮が目の皮がたるむ。伸びてきたあたたかな日差しに手を差し出したいと思考が逸れて、なおざりに字が揺らぐところだった。
控えていた侍女に目配せをし、叔母を縁側へ促すとその手には小さな赤い巾着が。その中身が「ちょっといい?」の内容なのか。口角を上げて待ちきれない様子はまだ年端のいかない頃の姿を思い起こさせる。
1743