if「お前が熱出すなんて珍しいな、デンジ」
ピピピと軽快な電子音が、ごうごうとエアコンは音をたて、ろくに聞きもしない朝のニュースの音声が雑に流れ込む空間で、鳴り響いていた。
「…ちげーし…」
そう拗ねたような言い方をして、眉をしかめながらデンジは体温計の数字を見つめる。ちなみに測ったのは一度や二度ではなく、これで三度目だった。
「おい、見せてみろ」
そう言ってデンジのもつ体温計を覗き込むと、やはり37.5と示されていた。何度測っても変わりやしないのに、デンジは諦めずにもう一度体温を測ろうと体温計のボタンを押しては懲りずに脇に挟み込もうとしている。
「…デンジ、今日は学校休みな」
そう彼に言い、欠席の連絡を入れるためにテーブルの上に置かれたスマホを手に取ろうとする腕が止まった。いや、止められたというべきか。
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