C7 後ろで一つに括っている髪を顔で押しのけながら首筋に唇を落とす。
「おい、おれはまだ仕事中なんだが」
提出するであろう報告書の誤字チェックをしているサンソンがいつもより低めのトーンで文句を言ってくる。とは言え、ソファに深く座るギドゥロに抱きかかえられる姿勢のままずっと仕事をしていたことを思うとまるで説得力がない。
紅葉戦争にまつわる調査任務でカストルム・オリエンスに派兵されたギドゥロたちは、秘匿事項が関わる任務ため他の双蛇党の兵と異なり、同行しているヌールヴァルとあわせて三人だけの部屋を与えられていた。
できたばかりで戦果もそう多くない部隊には破格の扱いだ。そのため水面下で批判の声がないわけではない。ザルな仕事をするつもりはないが、長期化して針の筵になるのもごめんだ。なにより表向きは客分、実際のところは監視対象のヌールヴァルの動向に注視しなくてはならない。
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