残温「王さん」
耳に馴染みのない声で呼ばれ、心臓が跳ねた。
焼き魚定食を食べる手を止めて振り返れば、予想通り。話したことのないクラスメートが立っている。
どうしたんだろう、教室じゃなくてわざわざ食堂で声をかけるだなんて。
「雨嘉さん」
「ぁ…えっと、何?」
驚きと不安で返事をしない私に、隣で野菜炒めを食べていた神琳が小声で囁く。やっと返事をしたけれど、これでは冷たく聞こえたかもしれない。
早くも自己嫌悪に陥りかけている私に、クラスメートは申し訳なさそうな顔をする。これは本当に返事が悪かったかも。
「お食事中に突然ごめんなさいね。次の実技が先生の都合で自習になったらしくて。王さん、教室にいらっしゃらなかったから、もしかしたらご存知ないかと思ったの」
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