人の脳は電気信号で記憶や思考をしている。果たしてそれが事実なのか勘違いなのか、その実水木にとって否定も肯定もできることでは無い。
しかし、もしそれが事実だとすればこの突発的な頭痛は頭がその電気信号を過剰にしてるか、あるいは電気信号で頭を焼き切ろうとしてるようにしか思えないのだ。
――███早う思い出せ。
混信音混じりの声、外乱音混じりの記憶。
誰かが、名前も顔も思い出せない誰かがそう、イヤに優しく語りかけてくる。
なんと言っているのか。思い出そうとすればするほど体が、あるいは本能がそれを止めるように頭痛の津波を遣わし掻っ攫おうとする。
肝心な部分が何を言っているのか分からないのに、どうしようもなく後ろめたいような、申し訳ないような、得体の知れない罪悪感ばかりが重くのしかかり、そのくせ、やはり鮮明に成りきらない。そんな朧気ならせめて罪悪感など抱かなければいいものを――。
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