月の死んだ夜に、気配を完全に消して皇帝の屋敷を訪れたクイーン。
縁側でひとり酒を楽しんでいた皇帝は、あっさりと訪問者の正体を言い当ててしまう。お前の銀髪は眩しすぎて分かりやすい、と杯を傾けて鼻で笑っているが、くだんの両目は純白を縁取る瞼で閉じられたままだ。
未だに立ちすくんでいるクイーンに、皇帝はこっちに来いと指示をする。重たい足取りで近寄ってくる銀の気配を読み、皇帝は杯を持ってない方の手をクイーンに伸ばした。
意図を知ったクイーンは躊躇いながら宙に浮く手に顔を寄せていく。皇帝は手袋を纏う指で整った顔のパーツをひとつずつ触ってから白い唇に口付けた。
「何も見えないってのは逆に刺激があって良いもんだな」今度来た時は目隠しをして遊んでみるか?と楽観的に笑う皇帝。ここに来るまでに押し殺していたあらゆる感情が一気に冷めるような気がしてクイーンは脱力した。ため息を吐いた口で来訪した要件を伝える。
「……RDが彼らの居場所を突き止めました。アナミナティもそこにある可能性が高いです」
「それは朗報だ。だが見ての通り、俺はいま目が見えねぇからここで大人しく待ってるよ」
「はい……すぐに戻ります」
「でもなぁ……ただ待ってるだけではつまらねぇ。そうだ!偉大なるお師匠様から有難い課題をくれてやる」
いらない!とクイーンが全身全霊で断る前に、皇帝は閉じていた両目をゆっくりと開く。
融ける寸前の氷ような半透明の瞳孔は、銀の光を反射して煌めいていた。彼を彼と知らしめる色を奪われても、全身に纏うその気高さは何一つ欠けていない。
皇帝の人差し指がクイーンを指す。美学を語ってくれたあの日のように。
「そいつらを宇宙の果てまでぶっ飛ばしてこい」
ニヤリと笑う皇帝の笑みにつられて「そのつもりです」とクイーンの表情にようやく不敵な笑みが浮かんだ。