3時間たっても何も話さず、呼びかけには視線を合わせるが、無表情。困り果てたヤウズのSOSに駆けつけたトルバ組が三日経てば元に戻ると解決方法を見つけてくれて一安心するが、それまでこの子どもをどうしたものか。
ちょこんと椅子に座る師の変わり果てた姿にクイーンはここぞとばかりに煽ってみせるが、まるい赤い目は首が痛くなるほどの長身の銀髪を見上げたまま無言を突き通していた。
ひとりで壁打ちをしているような気分になったクイーンはため息をつき、膝をついて目線を合わせる。「私はクイーンだ。君の名前は?」中国語で尋ねると少年は首を振った。
クイーンはぶかぶかの作務衣を着た軽い身体を抱き上げて「君の名前は“皇帝(アンプルール)”だ。覚えたまえ」と強めの口調で教えた。
「ぁ、んぷ…?」聞きなれないフランス語がむずかしいらしい。顔を曇らせた少年はクイーンの肩口に顔を押し込んでしまった。
「懐かれましたね」
「嬉しくないよ」