一頭と一人《少年!》
アオガミさんが俺に危険が迫っていることを伝える。背後から素速く迫る気配に、咄嗟にナホビノソードを出現させて防御の構えを取った。がちん、と俺のソードと敵の刃がぶつかり合い火花が散る。その光に眩みながらもどうにか目を凝らして襲撃してきた敵を見る…と、其処にいたのは大剣を器用に口に銜えた金の鬣と立派な角を持つ一頭の牡鹿だった。
「鹿…!?」
「グググ…」
牡鹿は澄んだ緑玉の瞳に怒りを滲ませながら俺を睨んでいる。
《少年、一度距離を取るべきだ!》
このまま押し切られてしまいそうだと判断したアオガミさんの提案通りに俺はソードを振り、牡鹿を払った。彼は長い脚で軽やかに後方へ跳ねると華麗に着地し、威嚇するかのように右の前脚で地面を踏みつけていた。
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