変わる世界「退屈だ」
無機質な天井をぼんやり見つめながら、薫は思わず独り言を漏らした。
愛抱夢との念願のビーフは呆気なく、思いもよらない形で幕を閉じ、鈍い痛みだけが身体に残っていた。
視界に入るのはギプスで固められた腕と脚。
退屈だ、と再度口にしかけた最中、聞き慣れた声と共に、勢いよく戸が開いた。
「ノックくらいしたらどうだ」
「声かけたじゃねえか」
「入室許可は出してないぞ。もし着替え中だったらどうしてくれるんだ?」
「…今日はツイてるぜと思うだろうな」
「怪我さえなければ蹴り飛ばしてるんだがな。いや、このギプスも武器になるか」
「待て待て、冗談だっ。お前の着替えなんて興味ねぇよ!」
お前の着替えなんて、だと?いちいち癪に触ることしか言わないゴリラだ。
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