「カーラ」
綺麗な桜色した薄い唇が開いてその名を呼ぶ。
「カーラ」
愛しい人。
でも、それは俺に向けられた言葉じゃない。
薫が溺愛するAIの名だ。
機械に女の名前つけるなんて全くどうかしてる。
そしてその機械に嫉妬する俺はそれ以上にどうかしている。
「…おい馬鹿ゴリラ
なんだその顔は」
「別に?
なんもねーよ」
ブスくれる俺に薫は怪訝そうな顔をする。
薫が俺に見せるいつもの顔。
元々吊り目な目をさらに吊り上げてその綺麗な顔に相応しくない毒を吐くのだ。
薫が俺に見せるのはそんな顔ばっかりだ。
なのに、カーラって呼ぶ時はすっげーいい顔で、俺にはそんな顔見せやしない。
ずりぃよ、AIの癖に。
薫は俺のなのに。
…流石にわかってるよ、AIとはいえ機械に嫉妬すんのはやばいって。
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