こどもの日の思い出「よし、こんなもんか」
ダンボールの中にぎっしりと詰まった本を眺めながら実家の自室で一人呟く。これは全てレシピ本だ。どれも使い古されており、油が跳ねてシミができていたり、醤油をこぼして茶色くなっていたりと他人からはきっと資源回収に出すゴミだと思われるだろう。
だがこれらは俺にとっては写真が入ったアルバムの様なもの。まだ料理の『り』の字も知らず、料理の名前から材料、調味料の分量、手順、全てをレシピ本を見て作っていた頃の思い出が沢山詰まっている。
初めて薫に振舞った料理のレシピとか、二人してオーリーを決めた日に記念で作った料理のレシピとか。高校受験に合格した日に作った料理のレシピとか、薫の好物であるカルボナーラのレシピとか。厚焼き卵を食べた薫の表情、ハンバーグを食べた薫の表情、ラザニアを食べた薫の表情。
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