遠雷に酔う 今年の夏は多忙な予定だ。仕事も課題もあって忙しいのももちろんだが、それ以上に、恋人になった美奈子とのデートをたくさんする予定だからだ。今までの夏休みはお互いに遠慮して日曜日にしかデートをしなかったけれど、今年は違う。平日だろうが夕方だろうが夜だろうが、会いたい時に「会いたい」と言えるし、会いにだって行けるし、お泊まりだってできてしまう。
それはさておき、せっかく恋人になれたのだから、ただ会うだけじゃない夏らしい思い出も欲しくなる訳で。夏休みが始まったばかりの今日は、ふたりのスケジュールを確認しながら予定を立てるため、実の家でデートをする。
「あー……あちぃ……」
いつもどおり近所の公園に美奈子を迎えに行く道中、思わず口をついて出てしまうくらいの暑さだ。真っ青な空に、真っ白な雲。照りつける太陽は眩しすぎて、辺り一面が白っぽく見える。強い日差しに目がやられそうだと胸元に引っ掛けていたサングラスをかけた実は、ふう、と熱を逃すように息を吐いた。天気予報によると、この先しばらくこんな天気が続くという。
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