竹箒 年若い蘭陵金氏の宗主が、蛍の群れを未だかつて見たことがないというので、その日の夜は急遽夜狩りではなく蛍狩りに変更になった。
金宗主はこの春から雲深不知処の座学に参加していた。義理の甥は、魏無羨がたまに彩衣鎮の料理屋などまで外へ食事に連れ出してやっているからか、はたまた気の置けない友人たちと同じ宿坊だからか、「金麟台へ帰りたい」と根をあげることもなく寺のように規律の厳しいここの生活になじんでいた。唯一の気がかりは金麟台に残してきた飼い犬の仙子だそうだが、時折江澄が見舞って文で仙子の様子を教えてくれるそうだ。その話を聞いたとき、様子見とかこつけてここぞとばかりに大好きな犬を触りに行っているのだろうと魏無羨は頬がゆるむやら歪むやら大変だった。
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