幸福を重ねて オレは疲れていた。
心底疲れていた。
権力争いも妬みも僻みも、どうにかしてオレを引きずり降ろそうとする連中にも。
心底くだらないとわかっていても黙っていられるものではない。
最初は流していたが、堪忍袋の緒が切れる時がきた。
人間に。
人間という生き物に愛想が尽きた。
老齢のオレを買ってくれた王には悪いが、さほど長くなかった“宮仕え”を辞める時がきたようだった。
清々した。
オレは最期までクズらしく生きてやる。
決してスマートとは言えない辞め方で王宮を後にした。
王には申し訳ないとは思ったが、なにやらわかったような顔をしていた気がする。
“宮仕え”という肩書がなくなったマトリフは、酒や女にだらしない典型的なクズに成り下がった。
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