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    be_cocoon

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    胡乱BLの冒頭(一日一文のやつ)

    冗長すぎるけど自分が嬉しい謎の部屋の描写をやりすぎた。

    胡乱しょうもな大学生BL冒頭 目が覚めると、市ヶ谷は見覚えのない部屋に出迎えられた。寝ぼけ眼で知らない天井を眺め、上半身を起こす。
     ここはどこだ? ワンルームっぽい整頓された部屋を見渡すと、自分のいるベッドのヘッドボードにデジタル時計が置かれていることに気がついた。
     二十三時四十七分の表示を見て、眠っていた時間はそんなに長くないことに安堵し、しかしこの不可解な状況に少しばかりの焦りを覚える。焦燥が少しばかりで済んだのは、市ヶ谷は本日、夜十九時より大学の友人主催の合コンに参加していたからだった。大方、飲み過ぎてその場で寝てしまい、参加者のうち誰かの部屋に仕方なく連れてこられたというところだろう。
     合コンはとんだ茶番だった。まともにやる気のあったのは主催の友人と、相手の女子グループのうち一人だけで、残りの女子は全員彼氏持ちだった。人数合わせで呼ばれた人間が過半数を占める終わりの合コンだったわけである。
     市ヶ谷はというと、友人に誘われた際に「女子集めるために石﨑呼んでんだよね」という一言につられて参加をしていた。
     石﨑——石﨑逸月とは大学内でもそこそこ有名人な男のことだ。有名な理由はシンプルで、顔が滅茶苦茶良いのである。学部が違うので接点はほぼないが、それでも学内での知り合いがそれほど多いわけではない市ヶ谷が認知しているくらい、石﨑は飛び抜けていた。運良く講義が一つだけ重なっているので週一で姿は目にしているのだが、やはり遠目から見てもそこだけ空気が澄んでいるような存在感がある、と思う。艶のある黒髪と涼やかな目元が印象的だ。我ながら少し見過ぎかもしれない。
     というわけで、二つ返事で参加した合コンでは、市ヶ谷はワンチャンあの石﨑くんとお喋りができれば良いな、くらいに考えていた。男女の数を合わせるためにと誘われた合コンに男目的で行くなという話ではあるが、市ヶ谷にとってはここしかなかった。女の子は可愛くて綺麗でふわふわしていて魅力的だが、今は石﨑逸月だった。別に付き合いたいとかそういうことを思っているわけではないが、接点が作れるチャンスがあるなら足掻いてみたかったのだ。そもそも付き合えるとは思っていない。彼女がどうとか元カノがどうとかの話を聞いたことがあるし。
     ただ、市ヶ谷には妙な行動力があり、今回もそれが発揮されたのだった。

     結果として、市ヶ谷と石﨑がこの合コンを通してお近づきになることはなかった。まず位置取りを間違えて石﨑とは遠い席に座ることになってしまった時点で終わりが確定していた。十数人いた参加者のうち二人以外——市ヶ谷を入れると三人だが——が恋人持ちだったにも関わらず、石﨑は異様な人気を博し、周りにはつねに女子がいた。おいおいいいのかよ、と思いながらも開始二十分が経ち食べ放題メニューのパスタが運ばれて来る頃になると、もう市ヶ谷も諦めかけていた。それで、まあ近くの女子と談笑したりしていた。相手方の一年生も彼氏持ちだったので、ほとんど表面的な会話で終わった。今思えばお互い虚無の時間だ。
     そして、そこからはあまり記憶がない。自分が知らない部屋にいることを考えれば、きっと飲み過ぎたのだと思う。なんて傍迷惑な奴なんだと自分のことながら呆れる。男女きっかり一対一の合コンに男目当てで行って酔い潰れて知らない人の家にお世話になることある?

     いや、そもそもここ、誰の家だ?

     完全にまどろみの状態から覚醒した。市ヶ谷は部屋をもう一度見回した。やはり部屋は整頓されていて、学生らしい慎ましい広さながら見栄えが良い。家具はシックな茶色で統一されていた。本棚には大小様々な書籍が詰め込まれ、机の上にはレポートで使用したのであろう本やレジュメが積まれている。ぬいぐるみや飾りなどの実用的でないインテリアは存在していなかった。どちらかといえば女子大学生よりも男子大学生の部屋であろう、とあたりをつける。
     そうしてようやく、家主が見当たらないということに気がついた。いや、よく耳を澄ますと扉の向こうから物音がする。バタンという扉を閉めるような音と、その後に、かすかに人の動く音。扉を隔てているので分かりづらいが、おそらくワンルームのこの部屋以外で何かするとなったら、おそらく風呂かトイレくらいだろう。
     あとどのくらいでここに戻ってくる? 焦りが生まれる。
     今日の合コンで、市ヶ谷が知り合いと呼べるのは主催の友人だけだった。その友人は唯一の合コン本気勢であり、同じく合コン本気勢であった女子側の子と途中から意気投合しているのを見た。つまり、おそらくその友人の部屋である可能性は少ない。そもそも、その友人の部屋に市ヶ谷は行ったことがある。こんなに綺麗な部屋じゃないのは知っている。
     手がかりはあるんだろうか? 足元の方角にある机にはレジュメや本が置かれている。もしかしたら名前が書かれているかもしれない。
     ——いや、見てどうする? どうせ家主が戻ってくるまでには数分もない。それでも、知らない場所に一人、そして見知らぬ誰か(いや、合コンで顔を合わせてはいるのだろうが)との邂逅が迫っている状況は中々に緊迫感のあるものだった。
     意を決し、ベッドから降りる。市ヶ谷は傍の机へと足を向けた。
     そうして机に無造作に置かれていたレポートの表紙に書かれた名前を確認するのと、扉が開いたのは同時だった。

    「あれ、起きたんだ。何してんの」

     麗しの石﨑逸月が、部屋の入口に立っていた。
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