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    ふんじ

    獄寂的な何かばっかおいてる。文章やら漫画やら落書きやら

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    ふんじ

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    ヒプクエ2ベースのパラレル獄寂小説。
    寂に復活させられた獄×大死霊魔術師寂
    大死霊魔術師で思いついた暗いベースの話を
    無理やり明るいラブコメに落としこんだ結果がこのIQ3小説
    細かいことは気にしない、地雷のない暇人のみご覧ください



    ※注意※
    獄死亡している
    寂雷が若干狂気気味な術師
    地雷ない人が見た方がきっとハッピーになれる
    地雷のない暇人のみご覧ください

     禁忌の反魂の術。一度亡くなった者の魂を呼び出し媒体を使い蘇らせる。
    その歴史は長く数千前から研究されているらしいが、
    その術の研究はごく一部の術師が隠しており、方法や条件すらわかっている者も少ない。
    やり方をわかっているその一部の者ですら、己の能力、準備物の入手の困難さ
    により挑戦すら至れないというのが現状らしい。
     さらに、その困難な条件を満たし対象を生き返らせたところで、大きな代償を払う羽目になるという。
     代償を背負ってもなお生き返らせたい。その絶対の意志で奇跡の才能を持った
    大死霊魔術師、神宮司寂雷は対象の復活に成功さえた。
    しかし代償は覚悟以上に寂雷を混乱と苦難に落としれる羽目になる。



    「先生どうしたんだよ」
    「聞いてほしい事あるってことやん」
    「そうですね、自分から呼び出しておいて、失礼しました」
    反魂の術の探求と必要素材の確保と、費用調達の為、
    暫くの間互いの目的の為に共に旅してきた仲間である、
    青棺左馬刻と白膠木簓を久しぶりに呼び出した。
    研究を行っている郊外の自宅ではなく、街のとある宿の一室。
    単純な話だけならそこらにある酒場で十分である。
    わざわざ一室を借りてまでということは、他の人間に聞かれたくない話を、
    つまり長年の目的であった禁忌の術、反魂の話であることは明白であった。
    二人は初期の段階から寂雷がとある人物をよみがえらせる為に、
    動き回っている事を知っている。三人とも利害一致の為に組んでいる。
    だから人の理に反する行為と分かっていても、それに対し何も言う事はなかった。
    ただ長い間供にした為、成功したかどうかや、寂雷の無事については
    気になる程度の仲にはなっていた。
    安堵半面、呼び出した所に一抹の不安は感じる。
    その二人の緊張の空気を読んで、寂雷はゆっくり口を開いた。

    「まずは結論から言います。反魂の術は成功させました」
    「確かあれやろ?代償って。相手さん……獄君やったっけ?大丈夫やったん?」
    「……前にもお話しましたが、代償は復活者の大切だった、好きだった人という記憶の喪失です」
    「最も愛していた人の記憶。聞くと一見それだけかとも思われますが、
    想像してみてください。自分の好きの為に努力し理性を働かせ、抑制をするのです。」
    家族が、恋人が、友人が、自分の好きな誰かという存在は、
    力であり、その人に嫌われたくない、迷惑かけたくないという気持ちは
    不の行動の制限ともなる。犯罪行為、迷惑行為などをその誰かに見られたくない、
    という気持ちは行動を抑制させる。
    老化や病気による忘却と似ているが、決定的に違うのは自分は何か大切な事を
    忘れているという事実を理解しているという点である。
    逆に言えば、そんな誰かがいない場合、人は時と場合で抑制が壊れる。
    誰もいない、という投げやりな気持ちは、自分勝手に不の行動に駆り立てる。
    反魂の術以外で無理やり復活させられた人間が、ただ食欲を満たすだけで、人間すら食べてしまう
    化け物になる事例などは多く見つかっている。
    「反魂した対象がどこまでの範囲の好意対象を覚えて、壊れるか。
    個人差はあるのか過去の事例が少なく、そこまでの特定までは現在もわかりません」
    「そんで?獄君はどうなったん?」
    「理性失って暴れているとかか?」
    「いえ、暴れたり取り乱したりはありません。戸惑いはしていましたが、
    基本的には大人しく現状を理解しています」
    暴れるわけでなく現状理解で大人しくしている。
    理性を失い人に襲い掛かるという考えられる、最悪な現状を回避できたことには安堵する。
    以前寂雷が一番危惧していた問題回避をできてはいるのに、
    曇る表情にますます疑問が湧いてくる。
    「何が問題なん?」
    「‥‥‥獄を復活させると決めて、その代償を知った際に
    暴れて私は殺されるという事が起きる覚悟はしていました。
    両親やお兄さん、そして多くの友人達が獄にはいましたから」
    大切な誰か記憶を失って、うっかりその誰かの存在を知って、
    何故その記憶が無くなったと責められて恨まれ殺される。
    その覚悟も二人は知っていた。寂雷の今までの苦労を考えるとその
    結末は残酷極まりない。今は良くてもその忘れた誰か
    次第ではこれから起こる可能性は十分にあり得てしまう。
    二人とも同時に気づいてしまう。これからはあり得ても、
    今寂雷が表情を曇らせるには早いのではないのか。
    その可能性と今回の呼び出しはまた別の事ではないかと。
    一体最悪より口を重くする自体とは一体何事か。
    二人が口を開く寂雷を固唾を飲んで見守る。
    「……獄をよみがえらせて、話をして、記憶が消えたのが、その、一人だけ、だったんです。
    両親でも、お兄さんでも、可愛がっていた空却君でも、十四君でもなく…‥…私だけだったんです」
    「え?」
    「は?」
    思わぬ一言に二人の口からは変な声が漏れる。
    寂雷が天国獄をよみがえらせたい理由を聞いた時に、
    左馬刻と簓は口には可能性としては脳裏をよぎっていた件があった。
    寂雷の話だけでは二人の関係の深さはわからない。
    ただ、もし獄の一番が誰かによっては、
    寂雷の目的は、獄に謝りたいという願いは叶わない。
    寂雷もその可能性があった場合を考えていたとは思ったが、
    自分は獄の一番ではないと最初から可能性を除外していたらしい。
    自分は一番ではない、その可能性を完全に除外していた。
    「だって獄は小さい時からの、友人で、そんな素振り一切なくて、喧嘩もしていて、それで…」
    「待て待て先生落ち着いてくれ」
    「つまり??友人を蘇らせたら、想像以上に愛されてたって知っちゃったってやつ?」
    「待て待て。先生、かけがえのない大親友だって意味かもしれねーぜ」
    動揺を隠しきれない寂雷に対し、左馬刻と簓は落ち着かせる為に翻弄する。
    旅の最中にどんな時でも冷静だった寂雷の動揺する姿を見てしまい、
    連られて動揺してしまい、三人とも落ち着きを取り戻すまでに数分を要した。
    「ええ、そうですね。今までの成功例でも恋人、妻以外にも子供、友人という例もありました。
    きっとそうだと思いますが、その獄に取って私の好感が高かった事に正直驚いてまして、
    いえ、それは今回の相談の一部にしかすぎないので」
    「これ以上に何があんだよ」
    「えぇ、私に関しての記憶、学生時代から現代の偶にあった時の記憶が
    ばっさり切りとられていました。自分が一度息絶えたという記憶、そして
    あれから3年以上経過しているということも受け入れて私の家で過ごしています。
    ‥‥‥ただその……」
    「ほらもったいぶらず言わんと」
    「なんというか、生前ではなかった特徴として、過保護でスキンシップが多くなったんです」
    「は?」
    「魂の定着させた疑似肉体に慣れたと思ったら、部屋の掃除や家事を始めたり、
    研究してたらて少しでも寝る時間過ぎたら部屋突入して来て
    ベッドに連れていかれたり。あと、その、あっ頭撫でてくれたり、
    寝付くまで赤子を寝かすみたいにお腹をトントンとたたいてくれたり・・・・」
    段々寂雷の顔に赤みが帯びていく。
    「先生ちょっと落ち着け、ほら水でも飲めって」
    「勢いよくしゃべったからやろ、顔赤いで」
    元々面倒見はよかった。という事前情報から推測するに、
    生前はツンとした態度で接していたが
    理性が外れた結果がこの過保護にしなったということであろうか。
    暴れたり、人を襲ったりしない分だけまともではあるが、
    そういう壊れ方するものなのと先人の研究不足を責めたくなる。
    「先生でとうすんだよこれから。先生を覚えていない、なら一方的に詫び入れるか?」
    「それじゃあ満足できひんから、よみがえらせんやろ?」
    「……暫くはこのまま一緒に過ごします。今までの反魂の術のその後も
    結果が残っていないことも多いので。可能な限りその辺りを観察して
    記録していこうと思います。無論獄に非人道的は実験は行いません」
    方向性としては決まっているみたいだが、
    獄の行動をどうするかについて悩んでいるのは明白であった。
    不快ではなく困惑。こればかりは左馬刻も簓も口をはさむことも
    助けを出すことも難しい。手助けたいと思っても頭の良さでは一番の寂雷でも
    この調子、突飛な発想が得意な簓もお手上げ、左馬刻の行動力も
    行動の指針が定まらない状態では動くこともできない。

    この地区一番の実力者のパーティーである三人が、
    至高を巡らせ悩んでいると、大きな足音で近づいてくる。
    その音と共に宿の店主らしき人物の困ります、という宥める声も次第に大きくなっていく。
    近づく足音が三人のいる部屋の前に止まる、と勢いよくドアが開く。
    「失礼する、……寂雷、帰るぞ」
    「獄どうしてここに」
    一見礼儀正しくもこの荒い登場に、二人は武器を取るも
    寂雷の一言で、目の前の髪型に特徴があるこの男が、件の獄であると理解する。
    「……」
    獄は左馬刻と簓を一睨みする。
    その間にも寂雷はどうしてこの場所がわかったのかを聞いている。
    おそらく術者との繋がりか、魔力を辿って辿り着いたのであろう。
    今までの記述にはなかった話なので、新手の発見ではあるが、
    寂雷はそれどころではなく動揺している。
    簓がふと左馬刻をみるも、この見たことのない寂雷の慌て具合に
    口を開き、固まっている。面白いことになっている左馬刻に
    爆笑しそうになるが、怖い視線に簓は視線を戻す。
    寂雷の問いかけに答えず、簓と左馬刻の方をじっと睨んでくる。
    今重要な事は穏便に自体を一時終わらせること。
    簓は瞬時に判断し、一呼吸おいて、舞台に立つときの様に獄に語りかける。
    「こんにちはー獄くーん。別に俺らは先生とちょーっと今後の方針についてお話してたけやからねー。
    許可も得んと打合せして獄君には悪いことしたわー」
    「……どうも」
    意外と会話できるタイプであるなら話は早いと、簓は部屋の扉を開ける。
    「もう今日は俺達の話し合いは終了したところや。
    獄君も迎えも来たところやし、寂雷と一緒にはよ帰りぃ?
    身体も完成しているとはいい、そういう獄君がまともな人間と
    見せかけたり、除霊されたりとかそういう対策はまだ完全じゃないやろ。
    この街だと獄君の正体に気づく輩も
    攻撃してくる輩も、売り飛ばす、人体実験を考える輩もぎょうさんおる。
    二人ともメンドクサイ事になるから、今日のところははよ街から離れたほうがええで」
    簓の一言に頷き、獄は寂雷の手を引いて、軽く簓と左馬刻に頭を下げた
    あと颯爽と部屋を出て行った。
    この一連の嵐が去り、左馬刻も簓も一息吐いたあと、
    二人とも座り込んだ。

    「……あれ本当に記憶ないんだよな」
    「なくてアレとか驚きしかあらへんわ」
    生前の寂雷との記憶はない。けれどあの過保護に化けた独占欲。
    「死んだと思ったら知らない人間から蘇生させられて、
    数週間で過保護とかどうなってんだよ」
    「というか先生生前の獄君とは本当に友人、というだったんやね。
    てっきりそういう関係かと思ってたんやけど」
    「訳わかんねーよ」
    左馬刻も簓も知識としてはあるが、術に関して詳しい訳ではない。
    なんでこんな事態になっているのか、気になりはするが調べる手段を持たない。
    本職でもない自分が調べるより、数か月後にでも寂雷に確かめた方が確実で早いのは
    明白であった。あの過保護からおそらくは寂雷は獄に殺されるという事態は起こりえないだろう。
    「好意があったとわかったけれど相手に記憶なし、けれど
    相手は過保護で世話湧いてずっと傍にいるって」
    大した代償だこと、簓の零した一言に、本当だなと左馬刻は天井を見上げ溜息を吐いた。

    。。。。。。。。。。。。


    「……獄なんか怒っていないか」
    「…‥」
    街を抜けて森の奥深く、通常の人間や動物全般すらも
    迷ってもたどり着けない魔術をかけた屋敷。
    代々黒魔術の名家であった寂雷の家は其処にあった。
    本来なら寂雷以外は順路すら認知できずたどり着けないところだが、
    反魂という寂雷の術の一部、つまり寂雷の一部という認識で
    獄も迷わず屋敷に辿り着けたのであろう。
    新たな発見と思いながらも、今の寂雷はそれどころではない。
    腕を握る手は決して強くはない。
    腕を引かれているという状況であれど、寂雷が速度を弱まると
    少しばかり獄の速度も低下した。
    生前の獄ともこういう事があった。
    強引に連れていかれたみたいであったが、決して寂雷が痛がる事はしなかった。
    屋敷に辿り着き、そのまま寂雷の部屋に連れていき扉を閉める。
    ベッドの縁に寂雷を座らせると、外着をゆっくりと脱がせ一つ一つをクロゼットに片付けていく。
    無論寂雷はそんな指示を出していない。獄が自分で考えて行動している。
    その間は無言で寂雷との顔を合わそうとしない。
    「……獄、私に言いたい事があるなら言ってくれ。言ってくれなきゃわからない」
    「……多すぎて言いたくない」
    蘇った獄に対して、今までの経緯と獄から投げられた質問は一通り答えてきた。
    何故獄を蘇らせたのか、その一つを除いて。
    寂雷は今は答えられないがいずれと、説明を延期させた。
    獄の立場で言えば、それこそ一番聞きたい事であろう。
    無駄だとは思いつつも寂雷は笑いを逸らす。

    「…もしかして肉体の不調かい?君の骨と肉の一部を詰め込んで、人の肉体と変わらない
    肉人形作ってみたがどこか不調でもあったのかい」
    「……身体は問題ない。まだ慣れはしてないが日常動作は異常ない。
    顔も完全に生前の自分の顔だ。つーか子供の時に大けがした腹の傷も再現って
    なんだよ、そのこだわり」
    「獄の身体、だからね」
    なんだそれは、と獄が笑えば、つられて寂雷も笑う。
    そのやり取りに心を和ませながらも、獄は咳払いをして話を続ける。
    「違ったそうじゃない。あーもうお前今日体調悪いのにどこほっつき歩いてんだよ。
    仲間と会うなら別の日にしろよ」
    「…別に私は体調不良ではないよ。微熱もなく身体の疲労感もないよ」
    「最近だるそうというか顔が赤い事多いから。…‥俺は今の身体だと体温がわからねぇけど」
    「その辺りの身体と感覚も調整していきましょう。」
    「‥‥‥また話逸らされた。そうじゃない」
    やはり誤魔化すのには限度がある。獄の追及能力というのは生前からも変わらない。
    自分の目的が果たされないなら、この和やかな日々をもう少しだけ続けたかった。
    それはいけない事だとわかっていても、少なくても自分から手放すには惜しい。

    「‥‥‥天国獄は3年前に大雨の日に崖から落ちて死亡。
    最初の発見者は友人で会った神宮司寂雷であった」
    「!」
    自分が手放さなくても、終わりはやってくる。
    覚悟はしていたが、獄本人からというのは寂雷にとっては辛いものがあった。
    「一部の記憶はないとは言ったが、断片の記憶を頼りにでもここまで
    調べられるとは思わなかった」
    新聞か周囲の村へこっそり出かけて調べたのか。
    わからないが反応で獄は確信を得たのだろう。
    「それはいいんだ。ただ気になる。どうして黙っていたんだ。」
    「……」
    「まさかお前が俺を殺したとか」
    「! そんな事はしていない」
    「そうだよな。本当に事故で殺したなら自白していそうだし、
    殺意があって殺したなら、第一発見者という疑われそうな事はやらないだろう。
    なんでだろうかな、そう確信できる」
    記憶がない、数日しか過ごしていない、それなのに言い切ってくれる。
    違うと言い切ってくれる。泡沫の日常断ち切ってくれる。
    これ以上は彼に対して誠実とは言えないだろう。
    寂雷は名残惜しい気持ちをゆっくり沈めていく。

    「……あの日獄と喧嘩したんだ。本当に些細な喧嘩。
    そして言い合いになって、私の館を獄は走って出て行って、
    その日は大雨で、追いかけていったら道が崩れていて…‥」
    目の前で落ちていく獄と、晴れた後に必死になって探して見つけた獄のボロボロになった亡骸。
    「謝りたかった。あの日喧嘩しなかったら獄は死ななかった。
    恨まれてもその場で殺されてもいいから謝りたかった。
    一方的な自己満足だってわかっててももう一回会いたかった。」
    たったそれだけの為に、反魂の術を完成させる為に研究を続けてきた。
    言葉にすればたったこれだけのこと。
    許してもらえなくても、殺されても、この懺悔を聞いてもらいたかった。
    淋しさはあれど、ほんの少しだけ胸は軽くなる。
    軽くなってはいけないとわかっていても、ずっと耐えてきたこの重圧に一瞬でも解放されたかった。
    寂雷の吐ききった言葉に対し、獄は寂雷と視線を合わせる為にしゃがむ。
    「俺は、天国獄だった物の残留物だ。本人じゃない」
    「……」
    人によって意見は異なる。
    記憶が一部消えていても、自身の身体でなくても蘇ったなら本人か否か。
    魂を元に戻した時点で本人の復活と言えるのであろうか、と。
    他人はどうあれ、生前の獄もこの話題が出た時に同じ回答をした。
    彼にとっては魂が戻ったところで、それは生前の天国獄ではないという意見である。
    自分は寂雷の友人だった天国獄ではない、と目の前の獄は宣言した。
    「だからお前が天国獄に謝ることはできない。
    俺に謝ったところで知らない俺は許すことはできない。
    そして俺もその事故の件をどう思っているか知らないから怒りや殺意は起きはしない」
    獄の淡々出てくる言葉は寂雷にとっての罰その物であった。
    お前の行動には意味はない。許されも罰せられもしない。
    「そいつの事だから、きっと反魂やったことも、何やってんだって呆れて怒ると思うぞ」
    完全に目の前の獄は生前の天国獄とは別の存在として認識している。
    本人の否定に、寂雷はその先を見つめる事は難しくなり、ゆっくりと視線を下に向ける。
    しかし獄は顔を持ち上げて無理やり顔を獄の顔と向い合せる。
    「本当の天国獄が許そうが許すまいが俺が傍にいてやる。
    お前の事を許さない世間も利用する連中もきっとこれから
    たくさん現れる。けど俺は俺自身はお前の努力と行動を否定はしたくない。
    馬鹿な行動だって思って終わらせたくない。だから肉片が無くなるまでは一緒にいてやる」
    「……獄は、君自身は私と一緒にいてくれるのかい」
    「嫌って言っても一緒に居てやる。これ以上狂った馬鹿したら止めてやる」
    「私は永遠に謝れないのか。辛いな……けど嬉しいな」
    これこそが神宮司寂雷代償であり罰である。
    友人でありこの世にいない天国獄への謝罪は数十年後自分が死んでからと、
    ますます長く苦しめと。そういう刑ということであろう。
    何か自棄になったり逃げだす事も、彼という絶対の見張りがいる。
    忘れない苦しみでもあり、また新たな出会いの喜びがある。
    彼は彼でなくても、きっと彼に近くずっと自分を導いてくれる。

    「で、本題だが生前の天国獄とはどういう関係だったんだ」
    唐突に獄が質問を投げてくる。
    「えっ友人……だよ大切な友人」
    「本当にそれだけなのか?」
    そいつ絶対、とか獄は独り言を呟く。一仕切り自己問答した思い出したと質問を加える。
    「そういや代償あるって聞いたけど一体なんだったんだ」
    「それ‥‥‥は」
    「反魂とか禁忌の魔術ってことくらい知ってる。まさかお前の寿命とか身体の一部とか取られてない
    だろうな」
    「大丈夫だよ獄、自分は‥‥‥多分大丈夫」
    「多分ってなんだよ。ちゃんと言え」
    顔が近い事に直視できずに視線を逸らしてしまう。
    反魂の術の代償について、こんな予想もしない形で支払う羽目になるなんて誰が思うであろうか。
    記憶の忘却はともかく一番大切だった人だなんて、面と向かっていう勇気はまだない。
    きっと彼の事だから代償の事実をすると、きっと別の意味で大変なことになる未来が
    予想で来てしまうのは、何故であろうか。

    生前の天国獄とは、本当に親友であった。
    その天国獄が自分にどこまでの感情があったかも今になっては闇の中である。
    しかし一度は意識した挙句、
    神宮司寂雷に対する記憶がないのに、彼の行動の数々と
    先ほどのその殺し文句で、寂雷は新たな感情を意識から逃れられない。
    きっと友人天国獄の記憶の件を話せば、目の前の獄はさらに嫉妬するであろう。
    きっとなだめるのに苦労するだろうと思いながらも、
    そんな彼の反応にほんの少しの興味と、胸が躍ると不謹慎なことを思いながら、
    自身の心臓の鼓動の高鳴りを落ち着ける為に、胸を抑えるのであった。
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