『ユキノシタを捧ぐ』 はらり、はらりと体内から溢れ、こぼれ落ちる花びら。
自身でも信じられない現象を薄気味悪く感じ、いくつもの文献を漁ってようやく見付けた「奇病」に動揺を隠せない。そうして、嘘であってほしいと心から願った。違う。これは悪夢だ。そんな筈がない。
何度願えど、それは消えてはくれない。ぐしゃりと握り潰しても、小さな白い花びらは相も変わらず美しいままだ。
この想いはまやかしなんだと思い込めば思い込むほど、花びらは増え続けた。両の手からこぼれ落ちていく白色に、クラクラと目眩がする。
認めたくなくて、信じたくなくて。ーーこれ以上大切なものを増やしたくなくて。
あの男にわざときつい態度を取り続けた。その度に自身の首を絞めていくような、そんな錯覚を覚える。抗う姿は滑稽でしかないと、自嘲した。
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