運命の特異点「先輩は、僕がこういう髪の色じゃなかったら、好きになってなかった?」
と、何となく聞いたら、先輩はきゅっと目を丸くした後、俯いて考え込んだ。
僕としては、多分、『そんなことはない』って、即答して欲しかったんだと思う。
『思う』、だなんて他人事みたいだけど、考え込まれている今、少し──どころじゃなくかなり不安になっているから、まぁそういうことなんだろうなと、遅れて気付いた。
待つ、というより、聞かなければよかったかな、とか、聞いてどうするつもりなんだろうか、とか、後悔と自問に忙しく結果として黙りこくった僕に、先輩は、俯いたまま呟いた。
「特異点、では、あったと思う」
特異点──。
その意味の在り処ろを僕が探している間に、先輩はゆっくり、だけど確実に言葉を重ねた。
1067