ほかのいろ 翌日が非番の日、帰った実家で受けた母の出迎え。明け方とはいえ真冬、まだ陽が昇っていない時期特有の暖かさに感謝しつつ、ただいまと、そして自分に気にせず眠るよう伝えて上がった自室。
食事は済ませた、あとは風呂に入って眠るだけ。
上着を脱ごうと手をかけた、その時に、気付いた、のは──
室内灯を反射してきらきらと光る、若草色の髪の毛、一筋。
摘んで、手のひらに乗せて、反芻した温もり。
『じゃあまた』
この腕の中に収めながら、そう交わしたのはほんの数十分前。
また会える、分かっている、それなのに──
「……もう、会いたい」
握りしめながら我知らずのうちに声に出してしまっていたことは、あいつには内緒にしておこう。
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