Unknown⑦──先輩は、まだ僕を好きですか?
聞いたのはあのときと同じ、署の目の前の交差点。
あれから何事もなかった、それまでと変わらず日々を過ごした、表向きはそうだったはずだ、少なくとも僕はそう努めていたし、先輩が滲ませていた違和感も徐々に消えていっていたからその確信は然程間違っていないと思う。
だけどそれを、僕は、一言で変えた。
先輩の目つきは、驚きの中に怯えのような何かを含んだものになった。
──その日、同じ勤務帯だった僕と先輩は、大きな事件が起こらなかったのもあって帰る時間も同じだった。だから途中まで同じ道を帰ろうと歩いていた、特に示し合わせもなく、自然に。
少し話もした、他愛のない世間話だ。
そしてそれがふっと途切れた。あの交差点を渡り始めたときに。
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