隣り合わせ 手の、影。
それがどうしようもなく、怖い。
その影は僕の手が作り出したもの。
必死に伸ばした、手は、何も掴めない。
それが、怖くて──サイレンのように泣いたのは、いつだったか。
「──サギョウ!」
呼ばれて──
色を取り戻す視界、映るのは眩しい金色、混濁する思考、その中で一番に理解したのは温もりで、それが伝わってくるのは、てのひら。
「無事だな⁉︎」
色を失っていたのは、僕の視界だけじゃない、この人の顔も、だ。
すぐには声が出なくて、だけどその青白い素肌をこれ以上は見たくなくて、代わりに掴まれた──掴んでもらえた、手に、力を込めた。
「──よし!」
張り詰めた目尻が少し、だけだけど、ゆるんだ。
ああ良かった、泣かせずに、済んだ。
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